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ペルセウス座流星群を見た帰り道。先輩は車を運転しながら、

「お前がチームで上手くいかず悩んでいることは、前から分かっていたよ。俺もチームのキャプテンを任されたときは、今のお前のように、何度も仲間と喧嘩していたよ。俺には俺なりの目標があって、初めは、ただそれを仲間に押しつけていた。だから、『お前の操り人形じゃない!』って、はっきり言われたよ。それで気づいたんだ。

俺たちは、サッカーというスポーツで繋がっているだけであって、それを取っ払ったら、みんなそれぞれに輝く舞台があるんだよな。前副キャプテンの恭介だって、グラウンドの外では、バンドメンバーとギター弾いているし、キーパーしていた正光は、休みの日には親父の会社の運送屋を手伝っている。

今まで見ようとしていなかったものをじっくり見ていくと、俺たちがこうやって集まってサッカーをしていることって、当たり前じゃなかったんだと気づいたんだ。それからの俺は、サッカー以外のことも仲間と共シ ェ有ア したくて、親父から借りたギター持って、恭介のところに習いに行ったり、アルバイトで正光の親父の運送屋に行ったりした。

そうするとさ、自然とみんなが俺を支えてくれて、「ありがてえ」って思えてきた。俺たちがチームとして集まっていることって、きっと奇跡なんだよ。当たり前なんて何一つない。だから、お前もじっくり見てみるといいよ。仲間のことを、もっとさ」

胸に痞つかえていたものがするりと腹の底へ落ちていく。和人先輩は、やっぱり神だった。僕にもできるだろうか。和人先輩のように──。「奇跡」と言った先輩の言葉が、さっき見た流れ星を思い出させた。

「お前は、真面目すぎる! そこが欠点だ。もっと、できないとこをさ、みんなに見せてもいいんじゃねえ? もっと仲間に頼ってもいいんじゃねえの? もしお前が、俺たちのチームのようになろうって考えているなら、はっきり言ってやる! 無理だから止めろ! お前たちは、お前たちのチームを作れ。あ、これキャプテン命令な。元キャプテンから現キャプテンへの引継ぎだ。ありがたく思え」

そう言って先輩は、また笑った。それが、僕が見た先輩の最後の笑顔だった。

和人先輩は、その次の日。消息を絶った。

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