今日はビートルズのコピーバンドで大人気の「ジャイルズ」のコンサートに来ていた。中々チケットが取れない中、今日のプレゼンの慰労と成功を願って高垣四井物産英国支社長が無理をして取った席だった。

此処の劇場ホールは、食事も抜群に美味しく今日はロンドン近くの海で採れた牡蠣を含むシーフードとワインを堪能しジャイルズの前座バンドの演奏を楽しみながらプレゼンを思い出していた。

バンドの演奏に一番近い特等席に陣取ったアラブのリッチマングループも意外に余り騒がず目立たないように食事をしながら、ジャイルズの演奏を今か今かと待っている。しかし、目立たないようにしながらも王子と王女では其処だけ花が開いたように華やいでいるのは隠しようがない!

場内が少しライトダウンし待ちに待っていたジャイルズの登場を知らせ、スポットライトを浴びたジャイルズが激しく演奏し始めると一気にテンションが爆発し、あちこちのテーブルから歓声が上がって床をドンドン鳴らしている。

高垣が本当に嬉しそうな顔をしてステージを見つめ、西田も興奮して目がキラキラと光っている。

翔は、その二人を見ながら何がチリチリさせるのか? 周りをゆっくり目で探りながら未だ皿に沢山残っているシーフードフライをつついていた、その時三つ程先のテーブルに座っている男女三人のグループの一人が翔達のテーブルの上何段か上がった辺りをジッと見つめていた。その三人がジャイルズの演奏を殆ど気にかけないで話し込んでいる。

其処だけエアポケットのような違う雰囲気を感じた翔は、あの三人はジャイルズを見に来たのではないのでは? と思っていた。

その時、ジャイルズの歌う翔の大好きな『ロング・アンド・ワインディングロード』が聞こえてきた。ふとステージを向くと前の王族達も少し頭を揺らしながら聞きほれている。

見ると高垣も西田も目をつぶって同じように少し頭を揺らしている。チリチリとした感覚が又少し強くなり三つ先のテーブルへ視線を戻したら三人の内二人が居なくなっていた。残った一人が王族のテーブルをじっと見ている。