作文

中学二年の時でしたね、雄太の作文が賞をもらうことになった、作文は苦手なほうだったのでビックリした。社会福祉関係の賞に担任の先生が応募してくれて入選した。本人も思いもかけないことで驚いている様子に見えました。

表彰式は二人で参加した。当日、自分の作文を読むということでその日に私も初めて聞くことになり、少々緊張気味で座っていたのを憶えています。

雄太の作文はママの友達のお母さんが亡くなった時の話でした。何度か遊びに行ったことがあって可愛がってもらっていた。施設に入所した時も何度かママと面会に行ってくれて亡くなった時お葬式にも出てお別れの言葉も読んでくれた。作文の内容はその時の気持ちを書いてあった。

いつも明るいおばあちゃんが施設の中で暗い顔をしていることを心配していた気持ちが書かれていた。読み進める中で雄太の声が、詰まり始めた。「泣いてるな」と気付いた。

聞いている人たちがハンカチで目頭を押さえ始めた。ママも涙が止まらない。雄太は泣いて読んだことを悔やんでいたけど、何人かの人が雄太の作文に「感動した」と誉めてくれる言葉のシャワーの中を通って帰ってきた。

幸せなひと時を過ごさせてもらった。作文は今も捨てずに持っていますよ。その後、亡くなったおばあちゃんの仏壇に社会福祉協議会の新聞に載った雄太の作文が供えてあった。それから、町のお年寄りに手紙を出すことがあって、その返事が届いた。

「あなたは福祉の新聞に載っていた作文の子ですよね。こんな感動する作文を書いた君は素晴らしい、育てたご両親も素晴らしい」と親まで誉めてもらって気恥ずかしいようだった。パパもこのことは自慢で、知り合いとかに話していました。

「あれは、実話なんですよ」なんて嬉しそうでした。その時の顔、忘れられない。

雄太も「スラスラ書けたんだよね」と言っていた。心が動いたことで手も自然と動いたようですね。血の通った良い文章でした。