歳の離れた貴方がこの先、貴方に相応しい人と歳を重ね、子をもうけ、やがては老いて亡くなる……これからの人生を私は肯定しようと思います。
貴方は若く、これからの人なのですから。貴方には貴方の人生があるのでしょうから。
私は離れたところから、その姿を見、その存在を確かめながら老いて、やがて貴方より先に死ぬのでしょう。
貴方を想う時、又、この世の全ての人にとっても、時というもの程非情なものはないと思います。
時は過ぎ、時が癒すものであったとしても、それは慰めではなく、忘却、或いは諦めなのですから。
否、私の魂は、貴方と二人遊んだあの日に留まり、決して時に負けるものではなく、「本当に私でいいの」との問いに、「これから別々の人生があったとしても、今日のことは永遠に忘れないから、貴女も忘れないで欲しい」と、吐息の中に返して下さった貴方の言葉。
その言葉だけで私は生きてゆけるし、この世のあらゆる理も、何もかも、時でさえ許すことの出来る、至上の贈りものであり、宝であって、決して思い出とはならないのです。
私は既に他のことは望まなくなっていて、半ばこの世の者ではなくなっていたのですから、死を悲しいことなどとは思えないのです。
過去の世では──その世界が唯一現実の世界だと多くの人が思い、疑うことをしません。人はその中で、押し合い圧へし合い、富や地位や名誉や、各々の欲望を満たそうと躍起です。
人の魂が試されているその世界で。
