序章 サムライ合宿と変人ポーの教え

サムライ合宿

妹が生まれた頃から変人ポーと二人きりで行くタイ全国一周ツーリングが始まった。全国一周と言っても一度に一周するのではなく、毎月1回、一つの県に訪れるというもの。大抵は2〜3泊で回り、ときにはこのために幼稚園やスクールを休むこともあった。タイは1都76県あるので、それだけでもこの合宿は7年間は続いたものだ。

アカ族母さんは日本語が喋れないということもありタイ語から話すようになった自分に変人ポーは、この全国一周ツーリングで徹底的に日本語や道徳、大げさに言えば大和魂的な教育をしたかったらしく、あとから聞いたところによると変人ポーにしてみれば「サムライ合宿」のつもりであったらしい。

では実際に何をしているかというと何てことはない、シンプルな観光だ。その県での名所を回ったり、その県で一番有名なレストランに行ったりと他愛もない。ただ、旅の中で二人の会話は常にあったものと記憶している。

変人ポーとしては、日本を出て海外移住をしたからこそ備わった日本人としての強烈なアイデンティティを持ちながらも、ハーフの子、それも長男に恵まれたものだから、特にボクへの想いが強かったのかもしれない。この合宿は3歳からスタートしているので前半の内容は覚えてないが、それでもボクにとってこの合宿の影響は大なるもので、ボクの人格を形成する基になったことは間違いない。