中国メーカーがつくるタブレットがカギだった

GIGAスクール構想とは、全国のすべての児童・生徒に一人1台のコンピュータを行きわたらせるとともに、通信環境である高速ネットワークの整備を企図した文部科学省のプロジェクトです。

当初は、令和2年度(2020年度)から5年をかけて整備される予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けて、学校運営を円滑に行うためのオンライン授業・学習の必要性が高まり、補正予算を活用して端末導入のスケジュールが大幅に前倒しされました。

世界的なパンデミックのなか、お隣の中国では瞬く間にオンライン授業が実施され、アメリカでも着々と同様の取り組みが始まる一方、日本では「まだ無理」という声が上がり、日本がIT後進国であることが知られてしまいました。一刻も早く挽回したいと政府が考えたのも無理はありません。

もちろん、コロナ禍の学校運営を円滑に行うためという大義名分があったと思いますが、ICT(Information and Communication Technology /情報通信技術)を推進する政府としては、「ここでやらずにいつできる」という考えがあったのでしょう。「なにがなんでも1年で日本全国にPCをばらまけ」ということになったわけです。

私が経営するアジア合同会社がGIGAスクール構想への参画を決意したのは、令和2年(2020)6月のこと。もともとは、GIGAスクール構想のタイムテーブルに合わせて、5年くらいかけて仕事を取っていこうとしていたのですが、コロナ禍で一気に早まることになりました。

徳島県教育委員会が「メモリーやハードディスクの機能は文科省が推奨する倍はほしい。けれども、価格は倍にはできない」と考えていたのは察知していました。伊達に安定した大企業での営業職を離れ、起業したわけではありません。メキメキと技術力を向上させ、低価格な製品を供給する中国メーカーに白羽の矢が立ったのは、当然のことだったと思います。

といっても、教育委員会の希望を叶える当てがあったわけではありません。そんな状況で入札を目指すのは、無謀に聞こえるでしょうか。けれども、中小企業は身軽に、そして機敏に動かなければ大企業には勝てないのです。

ありとあらゆる情報を探り見つけたのが、中国本土と香港を結ぶ深圳(しんせん)市に本拠を置くパソコンメーカーCHUWIでした。