UDの7原則

いろいろ聞いているうちに、人はそれぞれ違うからどうしたら良いのかわからなくなると、度々言われます。そんな時は米国の建築家ロン・メイスがまとめた「UDの7原則」を目安にすると良いでしょう。日本語訳は様々ありますが、英語の方が簡易でわかりやすいのでこちらをご紹介します。

1.Equitable use 誰にでも公平に使える

2.Flexibility in use 柔軟性がある

3.Simpleand intuitive シンプルで直感的

4.Perceptible in formation 指示がわかりやすい

5.Tolerance for error エラーに対する寛容性

6.Low physical effort 身体的な負担が少ない

7.Size and space fo rapproach and use 空間にゆとりがある

この7原則はUDを提供する人が、自分の造った物をチェックするために使うと良いでしょう。良い物を造ったと思っていても、この7原則で点検すると、特別扱いになって逆に不公平になっていると気づくかもしれません。

1.誰にでも公平に使えるとは、使えれば良いというものではないぞという事です。

「車いすの人は台車用の裏口から入ってください」

と言われて嬉しい人はいません。みんなが入る正面から入れるようにするのが原則です。

2.柔軟性があるとは、エレベーターのスイッチなどが高低両方に設置されてるような場合です。車いすの人や子どもだけでなく、重い荷物を両手に持っている場合など、その時々に応じた使い方が選べる事が望ましいものです。

3.シンプルで直感的とは、説明書も読まずに使える物などを指します。道路工事のお知らせなどは、重要な事がすぐにわかるような書き方に変わってきました。

4.指示がわかりやすい例としては、標識やピクトグラムがあります。漢字にルビが振られているものなども良い例です。視覚や聴覚などに障害のある人など、理解してほしい相手の状態は同じではないので、様々な角度からわかりやすさを工夫する必要があります。

5.エラーに対する寛容性とは、ミスが重大な危険にならないという意味です。昔からある電車の転落防止幌や、駅のホーム柵などだけでなく、操作ミスを犯した時の警告音やPCの『戻る』機能に、私たちは随分助けられています。

6.身体的な負担が少ないとは、あまり力を入れなくても使えるという事です。電動アシスト自転車や、軽く開け閉めできる引き戸など、以前の事を思うと軽く操作できるものが増えました。

7.空間にゆとりがあるとは、広いバリアフリートイレや、広い出入り口などがわかりやすい例です。最近では、運動施設やコンサート会場のサイトラインの確保が話題に上ります。前の人が興奮して立ち上がっても、車いす利用者のサイト(視野)が確保される設計の事です。

こうしてみると、自分のためにこそ有ってほしい工夫がUDだと、気づいていただけると思います。他にもいくつか身近な例を挙げたところ、「スイッチが大型化したんも、UDなんや。お洒落なだけかと思った」とアリコさんは言いました。昔のサッシの取っ手や和室の手掛けなどは指が2本しか入らない小さな物でしたが、今はとても大きくなって、開閉がしやすくなりました。

彼女は突如、とても難しい質問をしました。

「多種多様な文化や人がいるけど、7つの指標に沿えば、みんなに公平な世界は実現すんの?」

私は思わず、「そんな難しい事を聞かないでよ~」と答えてしまいました。これらをクリアすれば絶対に大丈夫とはいきませんが、この指標を生かして、一人でも多くの人が使いやすい物や街をみんなで目指す事はできますよね。