【前回の記事を読む】生徒会立候補を目論む幼馴染の誘い「一緒に出馬しないか?」

松岡葵と選挙結果

二〇〇二年十月十日(木)。

雨。どしゃ降り。でも俺には好都合だった。

陸上部とサッカー部は、階段を(もも)上げしながら(のぼ)り下りし、テニス部は一階の廊下で素振りに励んでいる。俺たち野球部も、三階の講義室で腕立て伏せの真最中だ。放課後の部活動が始まって四十分。そろそろだな。

キンコンカンコン――聞き慣れた校内放送のチャイムに背筋が伸びる。このときを待っていた。自然と部員の動きが止まる。吹奏楽部の楽器の音も消え、校内はしんと静まり返った。

「選挙管理委員会です。本日行われた、道枝(みちえだ)中学校生徒会役員選挙の結果を報告します。当選の確定した生徒は次の六名です。生徒会長二年A組松岡(まつおか)(あおい)さん。副会長……」

「よかったねー」クラスでも仲のいい菅田(すがた)が俺の肩に手を置いた。

「お、おう」

なんてことはない。予定通りだ。ちょっと顔がにやけそうになったが、冷静を装う。

菅田は窓から外を(うかが)った。「せっかくの当選だっていうのに雨なのが、もったいないね」

何を言っているんだ。校内放送は、グラウンドには聞こえない。この放送を全校生徒に聞かせるために、雨ほど好都合な天気があるものか。

「松岡の当選にみんな拍手!」

主将のかけ声で、部員たちが拍手をくれた。またも笑みがこぼれそうになったが、必死で押し込めた。

「こういう時、松岡ってはしゃがないよね。シャイなの?」

菅田は、本気で首をかしげた。

「ち、違う。そんなんじゃない」

当然、当然の結果だから静かに受け入れているだけだ。これから全校生徒の代表になるのに、俺シャイなんです、なんて言ってられるか。

「……以上が、選挙結果になります。新しく生徒会役員に選ばれた皆さんは、このあと生徒会室に集まってください。これで、お知らせを終わります」

ぷつんと放送が切れると、校内はがやがやと活気を取り戻した。

「松岡、今日はもういいから着替えて行って来いよ」

主将に促され、練習着を脱いでワイシャツを羽織り、学ランのホックまできっちり留める。