第1章 ヒューマンケアの実際

第1節 健康と日常生活からヒューマンケアを知る

健康であり続けるためには、毎日の生活を規則正しく過ごしていくことが重要である。

年齢が若いころは「健康」についてあまり考えないが、生活リズムが乱れることで体調を崩す、といった経験はあるだろう。自分自身の健康を捉えて管理し、健康を維持する生活を続けることは個々人の課題ともいえる。健康に対する考えに個人差はあるものの、自分自身へのケアの積み重ねが健康に関連することは理解できるだろう。

例えば、歯を磨くことは虫歯や歯周病を予防し口腔内の清潔を保つというケアである。さらに口腔内の清潔さは口臭といった周囲の人への配慮(ケア)であり、ひいては感染防止につながる。自分自身へのケアと他者との関係に影響を与えることから、健康の維持と日々の生活とヒューマンケアとの関連に目を向ける大切さがわかるだろう。

1)健康と日常生活

日頃の生活のなかで自身の身体の状態についてどのように感じているか?

勉強や仕事、家事に問題なく取り組めているときは健康について考えることなどないだろう。痛みや身体の不調があるときに「元の状態に戻りたい」と健康であることの大切さを感じる。私たちが感じている自身の“健康”についてどのように述べられているかを知り、健康の捉え方を理解することで、自分自身の健康のバロメーターを持ち、健康管理への関心を高めていくための知識を学ぶ。

(1)健康の定義と健康に関わる医師、看護師のあり方

健康の状態に対する感じ方や健康の状況は他者とは較べにくいものだが、健康の状態を知るためには表情、態度に表れていることを観察したり反応の違いとして捉えられるものである。健康障害があれば、血液検査やレントゲン検査の結果で医学的診断を導き出す検査結果の異常として表れる。まずは健康の定義と健康に関わる医師、看護師のあり方について確認する。

□健康とは

WHO(世界保健機関)憲章の前文において示されている文言は以下のとおりである。

健康とは、病気でないとか弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること。

(日本WHO協会訳)

ここで示された健康とは、病気と相対するものではないとしている。また、「肉体的、精神的、社会的」といった側面が挙げられ“当人”が「満たされた状態」とする主観的な評価である。健康であることは、一般的に医学診断においては検査値等の異常値がみられないことだが、個々の状態あるいは主観的な評価において「健康」は認識されるので検査値等の客観的な指標のみではない。