「あーあ、失敗しちゃった……」

佳奈美にこぼすと、

「うちは大丈夫、全部持ってきたもん」

って……もしかして、お小遣い帳のことか。

そうこうしていると、引っ越し屋さんが到着した。必要最低限のものしか持ち出さなかったつもりだが、置いてみると、三畳を占めるほどの量に。その荷物を見ながら、うんざりしたような顔で、私の父が言った。

「どないすんねん、この荷物。いつまで置いとくんや」

(え……?)

これで落ち着けたかと思ったのに、別に部屋を借りるか、家を買うか、苦渋の選択を迫られる。それからは、仕事探しと弁護士さんに提出する資料づくりに加え、佳奈美と二人で暮らす物件を探す日々が始まった。

結局、家を買うことにして引っ越したのは、三か月半後、年度末の三月中旬を過ぎた頃だった。人が動く時期だからと思い、期限を切って売り急いでいる物件をスマホで検索していたら、手頃な物件が見つかったのだ。

それでさっそく見に行ってみたら、問題なさそうだったので住むことに決めた。

折しも然る人気ドラマが再放送されていたことで、佳奈美いわく、

「フリーターよりひどいよ。『ニート家を買う』だね」

「ほんまやなぁ」

大きめの荷物は紅帽に頼み、細かな荷物はレンタカーを借りて運んだ。そうして、ふたたび新たな生活が始まると、ほどなくして仕事も決まった。

また、この間に一度、神奈川に戻り、弁護士さんにも会いに行った。その際、携帯電話に保存されている証拠メールを先生のパソコンに入れようとして、うまくいかなかったため、携帯電話ごと預けることにした。

それで私は、もう一台、携帯電話を買うことになったのだが、電話番号やメールアドレスが変わると面倒なので、同じ通信会社のものにした。

併せて、あの夫の怒鳴り声を録音したデジタルカメラも、複数のSDカードとともに預けた。

※本記事は、2021年4月刊行の書籍『夫 失格』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。