「そんなことじゃなくて、皆さんを助けられればって……」

「システム部に怪しい人間なんていないし、そもそも不可能なんだって。たとえうちじゃなくて廃れた遊園地の旧式観覧車でも無理だよ。コンピューターを乗っ取ってゴンドラを落とすなんて、人為的にそんなことはできっこない」

「そうなんですか?」

「絶対にね。しかも『ドリームアイ』は最新型で、構造は完璧だ。連結部はガチガチに固めてあるし、そもそもゴンドラは交換できる構造じゃないってさっき言ったよね。それに熱監視システムも採用して、常に機械部品の老朽化を見守ってるんだ。一匹ハエが入っただけで異常を感知するし……実はこれ、感知しすぎてちょっと面倒だけどね。

それにゴンドラ本体も、通常の三重扉よりも強度の高いチタニウムを使って四重にしてある。しかも全部が国産品でね。日本の技術を総集結させた最高峰の巨大観覧車だよ、まさに技術者の夢の結晶なんだ」

「じゃあどうやったら、ゴンドラが落ちたりするんですか」

「わからないよ。落下自体がありえないんだから。……たとえシステムが乗っ取られてても」

そう言うと宮内は頭を抱え、滝口も大きなため息をついた。

*  *  *

滝口と宮内のいる従業員食堂は、名前の示す通り殺風景な場所だった。大きなストーブが何台か設置されていて、横長のテーブルとパイプ椅子が乱雑に置かれ、食堂の看板には本日のメニューが書き並べてあった。夢の国とは到底思えない、華々しく輝く表舞台の裏側だ。

その部屋の扉が、がしゃんと音を立てて開いた。ダブルスーツの派手な見た目の男がふんぞり返って入室し、男女が向かい合って座る席まで迷わずにやってきた。そうなったのは、一緒に入ってきた猫背の警察官が滝口を指さしたからだった。貝崎に何か指示された彼は、早々に従業員食堂から出ていく。

「あなたが滝口美香さんですね。私は警視庁捜査一課の貝崎という者です。申し訳ないが、少しお話を伺いたい」

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