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エッセイ
『59才 失くした物と得た物』
【新連載】
有村 月

結婚してから35年、「愛」はなくとも「情」は生まれる

ダンナが死んだ―まさかの現実。自覚はなかったが、この時から私の「おひとりさま」は始まろうとしていたようだ。たしかにダンナは肝臓の数値が悪いと1ヵ月半入院したものの退院、体力も少しずつ戻りはじめ還暦祝の1泊旅行もし、そのたった1週間後にはこの世からいなくなるなんて、頭の中のすみっこにさえなかった事。よくいう野球の九回裏2アウトからの逆転満塁ホームラン的な。その1年半前、最愛の母が「くも膜下出血」で…

人気小説連載記事

小説
『ネムとジド』
【第2回】
喜田 美樹

「やっぱり、うちじゃ飼えないよ。かわいそうだけど、ねているうちに、すててこよう」

そこで指に乳をつけてさしだすと、ぺろぺろとなめ、そのうちに、皿に頭をぶつけながら、なめだした。なめおわると、いねむりをはじめた。おしりがぬれて、水のようなうんちがでている。指でぬぐうと、母犬になめてもらったように、安心しきってねてしまった。ネムは子犬をだいて、ペチカ(暖炉)のわきの、ワラぶとんをしいた小さなベッドにいって、よこになった。夕方かえってきた、母さんのミレンカは、ネムをみておどろいた。…

ランキング

  1. 小説
    『恋愛配達』
    【第14回】
    氷満 圭一郎
    1位 1

    覗き込むような上目遣いでドアから顔を出し、「あら、いらっしゃい」と僕を迎え入れた

    ぼくの年末の仕事のローテーションは、午前中は宅配、午後は酒屋の本業、夕方からまた宅配となっている。昼間不在だった家や夜間指定の荷物を届けて回るために、配達は夜八時過ぎまで及ぶこともある。午前中の配達…
  2. 評論
    『木下恵介とその兄弟たち』
    【第16回】
    木下 忍
    2位 2

    「恵さん、僕はずっと前から嫂さんに想いを寄せています。しかし、政二兄がいる以上…」

    祖父・周吉が亡くなって二か月後、政二と房子は正式に離婚届を出した。房子三十二歳のときである。恵介は、自分より九歳も若い房子が自立のために、美容師の資格を取ることに賛成して、美容学校の学費を出している…
  3. 小説
    『赤い大河』
    【第4回】
    塚本 正巳
    3位 3

    妊娠を報告した後、逃げるように家を出てしまった彼。意を決して連絡してみると…

    翌日の午後になっても連絡すらなく、時が止まったような室内には寒さも空腹も存在しなかった。意を決して携帯電話を手に取ると、両手が小刻みに震え始めた。祈るような気持ちで発信ボタンを押す。電話はすぐに繋が…
  4. 小説
    『氷上の蠟燭』
    【第8回】
    安達 信
    4位 4

    「イタ、イタタタタ……。先生、痛くて仕方ありません」と激痛をこらえながら…

    瑠璃は二人の話が聞こえない振りをして、「なんか二人で、楽しそうにどうしたの……。晩ご飯の用意できたから、食べましょう」と誘った。食卓には、かき揚げ、天麩羅に加え、かまぼこ、バイ貝の煮つけ、イカの黒作…
  5. 小説
    『飛燕日記』
    【第13回】
    春乃 夜永
    5位 5

    驚くほど音痴なため誘われたカラオケを断ると腕を激しくかきむしりはじめ…

    おそらく、私が言った「そういう人」を「交際経験のない女性」と解釈したのだろうが、残念ながら男性ばかりの職場だった。みんな童貞だ。近ごろ、私が退勤するのを駅で待ち伏せている二十七歳の先輩もそうだった。…

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    喜田 美樹

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  2. 小説
    『猫の雨傘と僕のいる場所』
    【第2回】
    倉澤 兎

    職場の人間関係(特に女性)に疲れ、四年ほど勤めた会社に辞表を提出した

    紀伊半島を巡る「紀勢本線」が全線開通したのは意外と遅い。昭和三十八年で、僕が生まれて二年後のことである。小学生の頃には、「DD51」と呼ばれるディーゼル機関車が客車両を牽引していた。この機関車が牽引…
  3. エッセイ
    『続・人災 子どもは親を選べない ~“毒親”は“家”を滅ぼす~』
    【第2回】
    深草 カオル

    母は恋愛経験どころか恋愛感情を抱いた経験もないまま父とお見合い結婚

    父と母は見合い結婚だった。一九五二年、父が三十歳、母が二十二歳の時に二人は結婚した。そもそも、この結婚が間違いではなかったのかと、私は思っている。当時は、見合いをしてしまったら、もう断ることができな…
  4. 実用
    『子どもの可能性を引き出す魔法』
    【第2回】
    吉田 敦子

    「ゆとり教育」でさらに広がった教育格差。地方都市でも優秀な子どもが育つ親の意識とは

    子どもの可能性は無限大。その可能性を引き出してあげるきっかけ作りは、親や周囲の大人にしかできません。どのような環境に子どもを置くかで子どもの人生は大きく変わります。やがては、未来を担う子どもたちにこ…
  5. エッセイ
    『認知症も悪くない』
    【第9回】
    西口 守

    ある日突然妻の母が同居宣言! 頭が「???」でいっぱいになり記憶がとんで…

    2015年9月15日。19時頃。帰宅するといい匂いと、談笑が満ちあふれていました。なんと、お母さんと妻の妹(次女)そして妻の三人の焼き鳥パーティが盛り上がっていました。女系三人、当たり前ですが、よく…

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