【前回の記事を読む】先祖は超能力者!? すべての謎への鍵は父が語る伝説にあった

第三章【判明】

佳津彦が笑って答え、伝承話に戻った。

「古墳時代からずっと、その墳墓を隠すようにと。また、代々それを守っていけと、古文書というほどの物はないのだけれども、口頭で伝わってきているんだ。もっともその時代に文字はなかったがな。ましてこの話に高い信憑性を持たせているのは、形ある物も一緒に伝承されてきたということなんだ。それは凄いぞ、直径50センチメートルを超える大型の内行花文鏡(ないこうかもんきょう)だ、こんな大きさの銅鏡はほかにはない。いつの日か女王に呼ばれる時がくる。その時に役立つ物だから家宝にせよ、そして命に代えても守れと、一子相伝とまではいかなくとも、そのように伝わっているんだ。しかしこの伝承も今をもって終了かぁ。寂しいようなホットとしたような複雑な思いだなぁ」

銅鏡の伝承はほかにもあるが、天見家の伝承はそれらよりかなり古いと考えられる。話の内訳を知って明日美は言う。

「なあんだ、そぉいうことだったのかー!」

これで佳津彦の書斎の謎が解けてきた。金庫に入っていたものは銅鏡であり、また長い伝承の間にいつしか、墳墓の場所がわからなくなっていたのを佳津彦が探そうとしていたようなのだ。書斎にあった資料はそのための物と見受けられる。それでも疑念はまだ残る。

「でも先生。上にある遺跡を円墳と仮定した場合、祠の下あたりに主体部があると考えるのが妥当じゃないんですか?」

弁当を食べ終わった明日美は、スナック菓子を口に入れながら、社会科の教師である父にいたずらっ子のように手を挙げて質問した。

「いい質問ですね。そう思って先生は祠の管理がてら、一度その下を掘ってみたことがあったのです。この山の所有者は私ですから盗掘ではありません。ちょっと問題がありますが心配無用です。当然ですが盗掘された痕があって副葬品は何一つありませんでした。それはそうと地下に入ってここに来る途中で微かにですが、光が差し込んでいるのが見えたのです。あれは祠の下あたりからで、ここに繋がっている気がするなぁ。そうだとすれば、後は自ずとどういうことなのかがわかりますよね」

佳津彦も笑いながら明日美の冗談に合わせて答えた。

地底にある古墳の上で過ごす親子団欒のひと時である。ちなみに一見すると奇妙な光景に思えるが、先祖の墓前で食事をすることは、地方ではよくある風習であり必ずしも珍しいことではない、先祖崇拝は日本人であるための原点回帰なのかもしれない。なおも質問は続いた。

「私も、祠が地割れに崩れ落ちるのを見ました。やっぱりここと通路で繋がっていると考えるのが妥当だと思います。だとするとあの場所はダミーで本物はその地下深くにあったということになりますよね。石川県の秋常山(あきつねやま)古墳とか長野県の森将軍塚(もりしょうぐんつか)古墳を覚えているでしょう。あんな風に古墳は権威の象徴で目立つ場所に造るのが普通だと思うんです。先祖様はなぜ隠したんでしょうね。それにこれは前方後円墳ですよね。ここまでヤマト政権の力が及んでいたということなんですか、角塚古墳と何か関係があるんですか。お父さんは先生なんでしょう、教えてください」

矢継ぎ早に溜まった疑問が投げつけられた。佳津彦が楽しそうに目を輝かせ疑問に答える。その顔にはたえず笑みがこぼれていた。

「私も時間をかけてあっちこっちに行って、いろいろと調べたのです。残念ながら皆目わかりませんでした。ですが、すべての答えをこの下で眠っている女王様が教えてくれるはずです。さあ始めるぞ!」