孔子(こうし)は次のようにも言いました。「もちろん、人徳者(じんとくしゃ)の発する言葉には、人を感動(かんどう)させる(ちから)があります。しかし、そのような人を感動(かんどう)させる言葉を持っていたとしても、必ずしも完璧(かんぺき)人徳者(じんとくしゃ)とは言えないかもしれないのです。同じように、(じん)の心を持つ人は勇気(ゆうき)を持っているはずです。しかし、勇気(ゆうき)があるからといって、必ずしも人の心が完璧(かんぺき)であるかというと、そうとは(かぎ)らないものです」

大切(たいせつ)なことは、言葉だけではないし、勇気(ゆうき)だけでもない。思いやりの心があるかないか。自分(じぶん)他人(たにん)からしてほしくないことや、自分(じぶん)にとって(いや)だと思うことは、他人(たにん)にもしないこと。それが思いやりの心なのです。人徳者(じんとくしゃ)には、すべからく、この思いやりの心がそなわっています。相手(あいて)心情(しんじょう)自分(じぶん)()()()えて、相手(あいて)を思いやる気持ち。その気持ちがあるかないかが大事(だいじ)なのです。その気持ちを大切(たいせつ)にすることで、(とく)(みが)かれ、高まっていくのです」

 
※本記事は、2021年11月刊行の書籍『孔子に学ぶ「五常の教え」』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。