霊術家養成カリキュラムがあり講受会は、通常一教程十日間、一クラス五十名で行われた。

第一日 ①霊子顕動法 ②呼吸法 ③腹力増進法

守平がホールの中央に立って霊子を発動させることから始まる、咳ひとつする者いないなか、時計の針が一分、二分、三分、と時を刻む。やがて人々の体が穏やかに揺れ始める。

突如としてひとりが震えるように激しく動き出す。次々周囲に伝わり、ついにはその場の全員が止めようも止まらない激烈な霊動のうねりに翻弄され、手が動く、足が動く、床を離れて五、六十センチも吊り上げられたかと思うとストンと下がる。また吊り上げられてストン、約二十分後、いましがたの場面が嘘であったかのように、静けさが戻ってくる。我に返った受講者たちは第一回の講義終了を告げられるのだった。第一日はこれを中心とした技術が教授されることになる。

第二日 呼息顕動法

二人で組み、相手に息を吹きかけて顕動を起こさせ、息を吹きかければ、木の葉のように吹き飛ばされていき、逆に息を吸うと十数メートル向こうから吸い寄せられてくる。術者が中指一本動かすと、上下にも前後にもまた右回転、左回転など、相手は意のままに動く、被術者は背を向けて立っているので、予想はできない。意識は通常のままで体だけが操作されるのである。

第三日 霊引法 霊斥法 危険術

手のひらを上下させて、被術者をひきつけあるいは遠ざける顕動法の応用。

第四日 霊子板潜動法

まず霊子板というものを用意する。霊子版とは、縦二十一センチ、横十二センチ、厚さ一センチの檜材の板で、四隅を半円形とし、周囲の面取りしたものである。最初は一枚を要するのみだが、修練を積むにしたがい、百枚くらい必要になる。潜動法によって霊子作用を伝えられた物質は、前進・躍動を開始する。霊子潜動法七法が記されている。

第五日 潜動法の復習

第六日 霊子板潜動法の応用 霊融顕動法 集団顕動法

第七日 卓子潜動法 椅子潜動法

第八日 空間潜動法 テレパシーや読心術の基本訓練

第九日 空間潜動法の応用

第十日 諸種の民間療法に関する講義

新思潮太霊道 中根滄海著と但し書きで、次のように霊的治療の様子が紹介されている。

『太霊道本院の治療部に、日々参集し来る患者の病床は、ほとんどすべての種類を網羅せり。いずれも数年もしくは数十年の疾病にて既に大医に見離されし者が最多数を占めし。そのうち、未だ医学上ほとんど根本治療の発見されざれし種類に属するもの多く、回復の見込み薄弱なる患者すこぶる多し』

『太霊道施術の方法というのは、すこぶる簡明なり。ただ患者と二尺ないし三尺を隔てて相対座し或いは施術者が患者に対して、単に指頭を向けるのみのこともあれば或いは一々患者へ施術者の手を軽く押し当てることもあり。その時間は二、三分ないし七、八分に過ぎず。その結果、只今まで病苦に耐え得ざれし症状も、夢のように消えて全治すといえり殊に不思議なるは、遠隔治療ということなり。遠隔治療とは、患者に接することなく、遠距離において治療を施すなり。もし面識者にあらざれば、患者の姓名及び住所と写真、または筆跡を送れば、これによって施術し得るなり』

著者の中根氏は、あまりに簡単な方法で病気が治るのを見て、最初は催眠術の類い、或いは幻術ではないかと疑ったらしい。治療の効果に関する正確な調査を開始した。

その結果、治療のものを含めて回復率は九十パーセント以上の好成績を示していることがわかったのだ。

是を読んで驚かない人がいるだろうか。神業というより神そのものではないのか。