「このあか、ねだんがたかい、しゅだけにする。それをうる」

「誰に?」

「おおきなはかをつくるひと、おやしろをたてるひと、王さまやじゅじゅつし」

「ねえ、どうやってこの石の壁から、赤い筋だけを取り出すのさ」

「このいわ、すこしずつけずる。しゅ、よりわける。また、あかいところ、けずる。くりかえす」

なんとか目の前の子供たちに分かるように説明をしようと一生懸命な男の様子に、子供たちの方も少しずつ信頼を寄せていった。

「壁、削ってみたい」

ゲンタが手を上げた。

「僕も」

他の男子二人もそれに習った。

「服が汚れる」

「石杵は重たそう」

女子四人は冷ややかな目を向けた。

「全く男子のやることは分からん。乱暴なだけじゃ」

「壁なんか削って何になるんよ」

「おじさんの邪魔になるだだよ」

「いい加減になさいよ。ねぇ」

「女子、うるさい」

とリュウトが大声で言った。

「うるさいって、なによ」

とさゆりがやり返したが、返事はなかった。すでに、男子三人は石の壁を削ることに夢中だ。さゆりの声を無視して、男から杵を借り、まずリュウトが試した。全く歯が立たなかった。叩いても、叩いても、岩はびくともしなかった。思いっきり叩いて、火花が出るのではないかというほど強く叩いたが、壁は全く割れなかった。

ショウが試したが、やはり杵がはじき返されただけだった。はじき返された時、火の粉が飛んだ。一瞬だけ、チカッと光った火の粉は、七人の中でただ一人短パンを穿いたショウのむき出しの足に飛び、むなしく消えた。

「ははは、下手くそ。もっと力を入れろよな。貸してみろ」

ゲンタが杵を壁に叩きつけたが、やはりちっとも砕けなかった。

「とてもかたい。ちょっとやそっとじゃない。とくべつなしかたでたたかないと」

男は言った。

「この岩はチャートみたい。この細かな岩肌、ぬめり感。チャートってとても堅いんだ」

と、ショウがつぶやいた。「コツコツ、コツコツ、する。てつのくさび、つかいたいが、たかい。つかえない」そしてさらに続けた。

「くさびのかわり、このいし」

と言って、ゲンタの左手に少し細身の石杵を持たせた。そして慎重に探るように壁を指先であちらこちらと何回も撫でた。

「うん」と頷いて、「ここにそのいし、あてる」と言った。

※本記事は、2021年10月刊行の書籍『朱の洞窟』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。