Nissieさんと初めて顔を合わせたのは、五月の連休中、私が東京に出張したときである。東京のメンバーが、私の上京&Nissieさん入会の歓迎会をしてくれて、新宿の飲み屋に十人ほどが集まった。私たちは、中央に並んで座らされた。

彼の第一印象は、「ちょっと私のタイプではないな」だった。私は自分がオチビで太っているせいか、好きな男性のタイプは中肉小太り型である。Niisieさんは身長が高く、細かった。実際には一七五センチ、七十二キロと後で知ったのだが、見た目にはもっとやせて見えた。

楽しい宴会で、みんな大いに食べ、大いに飲んだ。全員が二十代前半から三十代後半の独身ぞろいのため、恋愛と結婚の話が中心になった。一人の男性が「京都の女性って、いいよなあ。尽くしてくれそうで」と言い出し、みんなの視線が私に集まった。あわてて「いえいえ、人によります」と打ち消し、それから隣席のNissieさんを内心で意識しながら、意を決して、はっきり言った。

「私は仕事を続けたいから、仕事を続けさせてくれる人でなければ、お付き合いも結婚もしません」

すると、間髪をいれずに隣から声があがった。

「いいですね。僕は仕事を持っている女性がいいと思ってるんです。もちろん応援しますよ。だって、仕事はしてもいいけど家事も完璧にやれ、なんて無理でしょ。ただし、僕、家事は得意じゃないんで、協力しあってというよりは、手抜きしあって、ということになると思うけど」

なるほど、手抜きしあう、というテがあったか。ピンポーン。心の中で鐘が鳴った。