【前回の記事を読む】シートベルトを付けていれば…生死を彷徨う大事故で得た教訓

無理は禁物

次の一件は、海外赴任中であった同僚が事件に巻き込まれて亡くなった事件ですが、その後、報告された内容をもとに述べることとします。

彼は一九七八年当時、事務担当者としてアフリカ・ナイジェリアの工事作業所に勤務していました。当時この工事作業所では大小の盗難事件が頻発していました。工事に必要な小工具類は特にねらわれ、その盗まれた工具類が社名もついたまま近辺の町で売られているというような状況が続いていました。

彼はこの状況を何とかしようとして、特に盗難が頻発する週末の夕刻、パトロールに出ました。そのとき資材倉庫のかたわらにトラックが止まっており、倉庫から何かを積み込んでいるのを発見しました。すでに平常の作業は終わっている時刻ですので、不審に思った彼は車を降りて近づいていったところ、気がついた窃盗犯たちは慌ててトラックを発進し、逃げようとしました。

彼はトラックをなんとか止めようとし、「止まれ!」と命じ、トラックのドアにしがみついたのですが、振動で振り落とされた際に後輪に巻き込まれてしまいました。トラックはそのまま逃走してしまいました。

事件直後の彼は、意識ははっきりしていて、同僚に何が起こったのか説明しつつ、しきりに息苦しさを訴えるようになったそうです。事態を重く見た工事作業所の責任者は、救急契約先のロンドンの病院に緊急搬送させるべくただちに工事作業所に近い町の病院へいったん搬送し、その後ナイジェリアの国際空港に向かう準備をしていましたが、搬送された町の病院で容態が急変し、帰らぬ人となってしまいました。原因は車にひかれたことによる内臓破裂でした。

教訓

この事故は避けられなかったのか、大いに議論されました。彼は日常的に発生する盗難に怒りを覚え、かつ現場を見つけた責任感からトラックを停止させようとして事故に巻き込まれてしまったのです。私も複数の国の工事場所で盗難事件を経験しましたが、私自身としては前述のような規模の窃盗団・グループには遭遇したことはありません。

そのため教訓として言えるようなことはありませんが、強いて言えば、現地人とのトラブルを避ける意味からもこのような場面では警察も含めて現地人スタッフに対応させるなどして、直接彼らと接触するようなことはなるべく避けるほうがよいと思われます。