自分(じぶん)欲求(よっきゅう)に打ち勝つ

孔子(こうし)生涯(しょうがい)を通じてたくさんの弟子(でし)がいました。その中でも、(がん)(えん)はとても優秀(ゆうしゅう)で、孔子(こうし)一番(いちばん)弟子(でし)と言われ、孔子(こうし)生涯(しょうがい)師匠(ししょう)(あお)ぎ、心から尊敬(そんけい)していました。孔子(こうし)もまた、(がん)(えん)人柄(ひとがら)()()いの中に、(すぐ)れた理解力(りかいりょく)才能(さいのう)見出(みいだ)して、なみなみならぬ情熱(じょうねつ)愛情(あいじょう)を注ぎ、()が子のように育てていました。

孔子(こうし)(がん)(えん)との対話(たいわ)(じん)の心を(きわ)めるための生活(せいかつ)の一部になっており、(がん)(えん)との対話(たいわ)を通じて、(じん)の心を深めることに(よろこ)びを見出(みいだ)していました。

ある時、(がん)(えん)師匠(ししょう)(じん)の心を()につけるには、どうしたらいいかと聞きました。孔子(こうし)(がん)(えん)に言いました。「まずは自分(じぶん)欲求(よっきゅう)に打ち勝つことだ。人の欲求(よっきゅう)無数(むすう)にある。あれが欲しい、これが欲しい。こうしたい、ああしたいと、人の心の中はつねに欲求(よっきゅう)だらけなのだ。(じん)の心はこの対極(たいきょく)にある。自分(じぶん)利益(りえき)だけを(かんが)えず、無欲(むよく)謙虚(けんきょ)な気持ちに立ち(もど)ることで、そこから(じん)の心が芽生(めば)えていく。

ひとたび(じん)の心が芽生(めば)え始めると、その人の(まわ)りの人たちにも、その心が(つた)わり、ひいては世界中(せかいじゅう)のすべての人に(じん)の心は広まっていく。無欲(むよく)謙虚(けんきょ)な気持ちに立ち(もど)るのは、(だれ)かに(たよ)ってできることではない。すべて自分(じぶん)の気持ち次第(しだい)だ。

自分(じぶん)(りっ)し、謙虚(けんきょ)姿勢(しせい)礼儀(れいぎ)礼節(れいせつ)(おも)んじ、それに(はん)するような()()いは、習慣(しゅうかん)として、できるだけ見ないようにし、聞かないようにする。そして、言わないようにし、行わないようにする。これが自分(じぶん)(よく)(おさ)え、謙虚(けんきょ)姿勢(しせい)に立ち(かえ)秘訣(ひけつ)だ」

※本記事は、2021年11月刊行の書籍『孔子に学ぶ「五常の教え」』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。