近年は准看護師を廃止し、看護師の養成を一本化する動きが見られているが遅々として進んでいない。看護専門学校の別棟に准看護学院があるが、看護専門学校が設立されて間がないこともあって、入学式、戴帽式、卒業式の行事を別々に挙行していることに対して、久船副学校長が国田に相談した。

「国田先生、准看護学院と各行事を一緒にできないものでしょうか」

すぐに国田は甲高い声で眉間にしわを寄せて言った。

「冗談を言ってもらっては困ります。准看護師は看護師ではありません。そもそも看護専門学校は卒業までに約三千時間以上勉強をしますが、准看護学校は二年間で千二百時間の授業しか受けません。そんな学校と同一にされている先生の方がどうかしています。行事は一緒にいたしません」

久船は国田が准看護師制度の廃止に賛成していることを知った。医師会にとっては二つの学校は入学式、戴帽式、卒業式の三つの式典を同時に挙行すれば尾因市長をはじめとして来賓の方や医師会役員も各一回の出席でよく、合理的な運営になるはずだが、国田の強烈な反対により実行できず、久船は怒り心頭に発した。

久船は国田の言った言葉を思い出しながら、国田は准看護師に対して敵愾心を持っていることは間違いないと思った。久船は准看護学院との統一行事挙行案は医師会役員の負担を考えれば、合理的で誰も反対しないだろうと思っていたが国田は強硬であった。

また、村山学校長に相談したところで「国田の思い通りにさせてやれ」と言われるのが目に見えているし、実際思い切って村山学校長に相談したところ、やはり予想した通りの回答であった。国田に煮え湯を飲まされた感じで、副学校長と教務主任のどちらが上司かわからない状態が赴任後数カ月で醸成されてしまった。

※本記事は、2021年11月刊行の書籍『【文庫改訂版】女帝看護教員』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。