【前回の記事を読む】遺棄死体発見者の事情聴取「家の中には、誰かいたと思います」

第二章 警察官は怖くない

刑事の下条は、とても恐縮したように、「ありがとうございました。本当に助かりました。さぞかしお疲れでしょう」と言って、お礼の五千円を渡すと玄関まで出て見送ってくれた。健一は急いでバキュームカーに乗って会社に帰ると、事務所を兼ねた社長の自宅に寄って、警察での聴取の報告をした。

先に出てきた妻の勝代は、

「大変だったわね、健一さん。ご苦労様。チョッと待ってね。紘一さん、紘一さん、健一さんが帰ったわよ」

と言って紘一を呼んでから、「これ、家に帰ってから飲んで」と言って、高級そうな赤ワインを手渡してくれた。

健一は、ワインが大好きだったので嬉しかったが、「今夜は、報告書作りだから飲めないな。明日までお預けか」と思って少し残念になった。そのうち、紘一が出てきて、

「いや~本当に大変だったな。疲れたろう。ご苦労様。今夜は、早く休んでくれと言いたいところだが……悪いな、さっきの報告書の件、頼むな」

と申し訳なさそうに言って、ビールを六缶くれた。

健一は、

「また、お預けの酒か」と思いながら、

「報告書の件は大丈夫です。明日持ってきます。ビールとワイン、ありがとうございます。頂きます。それでは、お疲れ様でした」

と言ってバイクに乗って家に帰った。そして報告書をほとんど徹夜で作成したのであった。