ミスマッチ陰性電位とカクテルパーティー会場

事象関連電位(何らかの刺激に伴い頭皮上で記録される電位、認知や思考などに関連するといわれる)の中で、ミスマッチ陰性電位(mismatchnegativity:MMN)というのがあります。

これは、同じ音刺激が連続して規則的に聞こえる間に(標準刺激)、時々聞こえてくる周波数、強度、持続長などがちがう逸脱音(偏奇刺激)に反応して、150~200ミリ秒後に陰性電位が記録されるものです。

まず100ミリ秒前後で一次聴覚野の上側頭平面に情報が届き、そのあとすぐに前帯状皮質で記録されるもので、注意の転換に関係しているといわれます。この電位測定の際、被験者は他の画像を見るように言われるなど、音を無視するように指示されます(音に対して非注意の状態となります)。

そして逸脱音が提示されると、その音に反応してこのMMNが生じます。これは、それまでの連続した規則的な(定常)音が記憶されている際に(記憶痕跡がつくられているといわれます)、逸脱音はその記憶情報と比較照合され、今までのものとは異なる(ミスマッチ)と認識されて(聴覚変化の識別)、MMNが出現すると考えられます。

このMMNは自動的で、注意によらない前注意的な反応と考えられています(非注意条件でも注意条件でも同じように誘発され、注意に依存しないということです)。

※本記事は、2021年8月刊行の書籍『「意識」と「認識」の過程』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。