【前回の記事を読む】まさかの姿に疑念「お父さんは何か知ってたんじゃないの?」

第三章【判明】

その圧巻の光景とは、テニスコート2面ほどの空間に、気品に満ちて優美な白い前方後円墳が鎮座する姿だったのだ。ぐるりと周囲を白いカーテン状の鍾乳石に囲まれ、1700年以上の間、人の目に触れることもなく、ひっそりと闇の中に眠っていたのだ。それが今、光を浴びてすべてのものが白く輝きを放ち実に神々しい、称嘆に値する素晴らしさである。

「さあ、お願いした通り、始めてちょうだい」

彼女の声に我に返った佳津彦はすぐに行動を開始した。

にわかに後円部に登りツルハシを振り下ろしはじめると、いきなり、「お父さん、なにすんのよ、ここはお墓なのよ!」

そう叫びながら明日美は、墳丘を駆け登り佳津彦を押し倒すように制止したのだ。

「いいのです、これは私がお願いしたことなのです。でも少々説明がいるようですね」

勢いで尻餅をついた佳津彦に代わって彼女が弁解しても明日美の制止は止まらない。墓を掘り返す行為に対しては相当強い抵抗感があるようだ。

「本当にそうだよ、どういうわけがあるのか説明してちょうだい」

詰め寄る明日美にたじたじと、説明だと言ってここに至るまでの経緯を話し始めた。

それは地震が収まって間もなくの出来事だった。佳津彦の脳裏に女性の呼ぶ声が響いてきたのだ。その時だけは少々驚いたが、電話で明日美からの奇妙な出来事の報告と天見家には代々家訓とも言える伝承があり、それ故に今起きていることを不明瞭ながら予見できていたのだ。逆にその時を待っていたほどである。

要するに佳津彦には心の準備ができていたというわけで、簡単な説明でも明日美の置かれている状況が理解でき、当然ここへは自分の意志でやってきた。背負ってきた機材とこれからすべき行動は、彼女からの指示を受けてすべてが決まっていたとのこと。