洞窟へと登る斜面の一番(すそ)、段々畑のあるあたりは上の段に登るための石段もあって比較的登りやすいが、そこから上は、まるでスキーのジャンプ台のような急斜面だ。しかも、握りこぶしのような大きさの、鋭くとがった石がゴロゴロと転がっている。転ぶと怪我(けが)をする。ここには土があまりないので、石は一度転がり出すと、コロコロと下まで転がり落ちる。下手に転ぶと足下の石がボールのように転がって、後ろを歩く人に当たってしまう。その急斜面を、山田と歩いた道順を思い出し、木の根を足がかりにしながら、はるなは三人を先導し、登っていった。この前は山田に助けられながら、山肌をよじ登るようにして上へと歩いたが、今ははるなが他の三人を助けなければならない。さゆりは問題なく歩き、ちさも見かけによらず上手に登っていく。みやは途中何回か(すべ)りそうになり、皆で手を引いて助けた。そしてあの洞窟へとたどり着いた。

大きな岩の中程に小さな穴がぽっかりと空いている。入り口は天井が低い。しかし、暗くてよく見えないが、奥行きはかなりある。はるなが山田と来た時には入り口から少し入っただけだった。今見ると、幅も高さも奥の方に向かって広がりがあり、冒険心がそそられる。

「地元なのに、こんな洞窟知らんかった」

「いつからあったんやろ」

「そうだ、昔むかし、防空(ぼうくう)(ごう)っていうのがあったって話、ばあちゃんから聞いたことがあるんじゃけど」

「昔のお殿様の隠し財産がいっぱいあるかも」

「ひょっとしたら恐竜の卵があるんとちゃうかなぁ?」

口々に思い付きを話すさゆり達に、はるなは山田から聞いたことを教えた。

「昔の人が掘った穴らしいの」

「昔って?」

「縄文時代か弥生時代かって、山田さんておじさんが言っていたわ」

※本記事は、2021年10月刊行の書籍『朱の洞窟』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。