【前回の記事を読む】【童話】掟を破り人間の世界へ!妖精リルルが向かった先は…

童話 妖精リルルと芳芽の出会い

リルルは途端に、顔が真っ赤になって、大きな芝生の上に倒れてしまいました。それっきり、気を失ってしまいました。

目を覚ました時、学校の時計の針が五時五十分を指していました。門限は確か六時だったので、大急ぎでぎりぎり間に合うように!!と祈りながら、リルルはさっと飛び立ちました。

ブーン。ブーブブブーン。

「はあ、どうにか門限には間に合ったわね。あ~あ、疲れた。」

なぜか胸をドキドキさせながら、リルルはこっそりと足ばやに自分の穴へ入って、すばやくベッドにもぐりこみました。でも、今日見たあの茶髪の男の子の顔は忘れようと思っても忘れられませんでした。つまり、リルルはあの人間の男の子に恋しちゃったんです。

それからというもの、リルルはまるで人が変わったみたいに誰も寄せつけなくなりました。ローズ、ブラウンにフランネルもです。リルルはすっかり昨日の男の子に夢中になっちゃったようです。

 

それから数日後、リルルはサリエルに呼び出されました。

「まあ、リルル。一体、どうしたというんですか。この頃、あんた変ですよ。食事もあまり食べないし、いつもの元気なおてんばさんには見えないし、前の若々しいリルルはどこへ行ってしまったの?」

「はあ、すみません。この頃、寝不足なもので、食欲が無いんです。」

「まあ、そうなの。しっかりしなきゃ駄目よ。あのね、何があってもかまわないけど、ルールは守ってくれないと困りますよ。」

「はい、分かってます……。」

落ち着いた声でそう言うと、リルルは疲れきった顔で穴に入りました。

みんなが心配して来てくれて、お見舞いを持ってきましたが、初めて会った男の子に会いに行くのはリルルにとってかなり勇気のいることでした。でも、リルルは町の中から、いちいち家の中をすみずみまで見回して、探して、なんとか男の子の姿を見ようと必死でした。そして、ついに男の子の家が分かりました。

 

門札に「桜木」と書いてあります。リルルは、男の子の姿が映った部屋へ飛んでいきました。