こういった局面でも、当たり前のセリフしか言えない不器用な父であるが故、ここは聞き流し、それどころか、これまでに積もりに積もった疑問の数々を矢継ぎ早に問いかけてみた。

「ちょっと待ちなさい、今は目の前にある障害物を片付けるのが先決だろう」

鼻息の荒い明日美に佳津彦は困惑した表情で言った。

「佳津彦の言う通りです。先に封印を解いてちょうだい」

「どうやって開ければいいのですか」

明日美の問いかけに答えて、彼女が佳津彦に指示を出した。

指示どおりにツルハシの先を石版の上部と壁の間に差し込もうとするが、上手く行かない様子で、見ているほうは歯痒くて仕方がない。結局は明日美自身でもう一つのツルハシを握り、手際よくテコの原理を使ってツルハシの柄を引いてみると、意外に簡単に石版は大きな音を立てて倒れ、その陰から現れたのは、鍾乳石を削り取って造られたアーチ型をした入り口だった。

「えええ。うっそぉー、こんな簡単に開いちゃうの。ダメじゃん、こんなんじゃ封印になってないよ!」

あまりにあっけなく解けた封印に、冒険映画のような難解な経緯を期待した明日美には、物足りない感があるようだ。

「当時の人間がここまで到達できるとは想定していなかったのです。大げさに封印と言いましたが、この石版は立て掛けてあるだけで、とりあえずの飾りみたいなものです。真実は意外と単純なものです」

「古来とか、当時のとか言いましたが、いったいいつの時代の話なんですか」

目先にあった疑問がつい、口に出てしまっていた。

「中に入れば全ての謎が解けるでしょう。さあ、おいでなさい。私のもとに」