【前回の記事を読む】ミロの作品から考える「シュールレアリズム」に隠された意思

高速鉄道

十月十六日の朝十時、バルセロナ発の欧州版新幹線に乗りマドリッドに向かった。最高時速三百㎞で走行している。バルセロナを出るとすぐに車窓は田園風景に変わった。日本では東京駅を出てもずうっと都会の街並みが続くので、如何に日本の国土が狭く人々が密集して棲んでいるかが分かる。山間部に入ってもなお家屋や街並みが必ず見える。

しかしここスペインでは丘陵がずうっと遠くまで見渡せて、しかも家並みがところどころに見えるくらいだ。そんな風景を楽しんでいるうちにバルセロナとマドリッドの中間にあるZaragoza Deliciosa(サラゴサ・デリシオサ)という駅に着いた。

結構大きな町であるはずなのだが、家並みなどと言ったものは見当たらなかった。ただ駅舎はモダンなデザインで楽しみを感じさせるものだった。

そこまでは私達の席の前後のボックス席には誰もいなかったのに、どっと五、六人しかも若い男女が乗り込んだので、静かだった車内は一気に賑やかになった。

若い男女は実に楽しそうに全く途切れずに会話している。スペイン語は若干分かる私達だが、会話の中身までは分からない。結局、賑やかな彼らの会話に包まれてマドリッドに着いた。

マドリッドにて

マドリッド風景

駅からホテルまでそう遠くはないはずだが、よく分からないのでタクシーに乗ることにした。バルセロナも人の多い大きな町だが、マドリッドはそれより比較にならぬほどの人の多さだ。丁度昼下がりの時刻に着いたものだから、町中交通渋滞が激しかった。しかも私達のホテルはマドリッド市街でも特に人通りの多い繁華街にある。

この日は週末で物凄い数の人が町に繰り出して溢れている感じだった。渋滞の道をタクシーの運転手は忌々しそうに、しかし愚痴を私達にこぼすこともなくホテルまで運んでくれた。

ホテルの建物は古そうだが改装したのだろうか、内部は新しく現代風な感じだった。ホテルの指定のチェックイン時刻まではまだかなり時間があったので、大きな荷物だけをホテルに預けてそこから近い王宮へ行ってくることにした。

ガイドブックによればスリや強盗が多いと書いてあるので、できるだけ身軽にして動きやすい格好にして出かけた。天気は爽やかで少し汗ばむくらいの気温だったから町を歩くのは楽しかった。