第四章 怪我と病気

海外、それも発展途上国に赴任あるいは出張された経験のある人にとって、病気や怪我はある程度避けては通れないことの一つではないでしょうか。

ここでは、私が実際に経験した病気や怪我について、その原因と思われることと私のとった対応について述べることにします。

交通事故

*シートベルトは忘れずに

普通、発展途上国へ赴任あるいは出張した場合、業務のための移動には乗用車などを使いますが、その際、現地の事情やルールに詳しい現地人を運転手として雇うことが多いようです。その理由としては、国やその地域によっては、外国人が事故を起こした当事者の場合、大変不利あるいはその身に危険が及ぶような状況となりかねないからです。

ここでは、実際に私の乗っていた乗用車が衝突事故を起こし、運転手は即死、私は大怪我を負って約九時間意識不明となった事故について述べることとします。

事故は一九八四年五月、インドネシアのジャワ島西部、首都ジャカルタ市から南東へ約百三十キロメートル、インドネシア第三のバンドン市より北西へ約六十キロメートルの山間部に建設開始された大型の地下発電所建設工事現場へ出張した際に起こりました。

私は現地工事事務所での打ち合わせのため、上司二人とともに出張していました。そして業務が終わった翌日、日本へ帰国するため上司二人とともに朝十時頃工事事務所を出発しました。

そのときの状況としては、車はその工事事務所所有の、中古ながら最上級の乗用車と現地雇用の専属運転手、そしてわれわれ三人合計四名でした。上司二人は後部座席、私は助手席に座っていました。一九八四年当時日本でもまだシートベルト着用は義務付けされていませんでしたし、現地インドネシアではシートベルトのない車も多く使われていました。

われわれの乗った車は非常によく手入れはされていましたが、シートベルトは備わっておらず、またフロントガラス類も旧式の仕様のようでした。

※本記事は、2021年10月刊行の書籍『アテンション・プリーズ』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。