【前回の記事を読む】学校帰りに男に襲われ…人生を呪った少女に目覚めた衝撃の能力

訓練

空き地の入り口には、黒い大きな車が止まっていた。後部座席に、恭子の学校の制服が畳んで置かれていた。車の中で服を着替えると、服のサイズはぴったりだった。車を降りると、何処にいたのか若い運転手が現れ、恵比寿顔の男は後部座席に乗り込んだ。

「それでは、後日」

男が窓を開けてそう言うと、車を発進させた。恭子は一度に起こった出来事に困惑しながら、去って行く車を見つめていた。

それから倒した男を思い出し、そちらを見た。姿が無い。あの運転手が、自分が着替えている間に、男を車のトランクにでも積み込んだのだろうか。恭子は、この忌まわしい場所から逃げ出したくて、家へと駆け出した。

数日後。男から連絡があった。連絡は家の電話にかかってきた。明日の放課後、出会ったあの空き地で待っていると言う。

恭子はまず本当に連絡があった事に驚き、何故電話番号を知っているのか、私が電話に出る事が何故予測出来たのか疑問に思いながら、学校の授業が終わると、待ち合わせ場所まで向かった。母には、友達と買い物に行くと告げていた。

目的地にたどり着くと、車は既に待っていた。後部座席のドアが開く。恭子は車に近づき、中を覗いた。そこには、恵比寿顔をしたあの男が座っていた。

「どうぞ」

恵比寿顔はそう言って車内へと促す。恭子は意を決し、乗り込んだ。自動でドアが閉まり、車はゆっくりと走り出す。

暫くすると、男は話し始めた。

「実は私にもある能力があります」

恭子はその言葉に思わず男の方を見た。

「私の能力は、眠っている能力を『目覚めさせること』ですが、貴女の場合既に能力が発現されてしまっている。私が目覚めさせた能力でないと、調整が出来ないのです。貴女は自力でその能力をコントロール出来るようにならなければなりません」

車は郊外まで走り続けた。最初の会話以降、車内は無言だった。住宅地を抜け、人気の無い林道を左折した先にゲートが見え、車はゲート手前で停まった。運転手がゲート横にあるボックスにカードをかざすとゲートは開き、木が覆い茂る広い敷地内を進んで、突然現れた近代的な研究施設の一角にある建屋の前で車は停止した。