さらに一週間が過ぎ、男子たちのからかいは、みやにまで及んだ。みやもまたからかいの対象になる程度には言葉の違いがはっきり残っていた。

一方で、ゲンタ達は、はるなの隣の席の女子にも、「どんくさい、のろま」「ば~か、いけとらん」とからかっている。そういった言葉を聞いてるうちに、ゲンタとその仲間はこういう性格なのかとはるなも少し理解してきた。

さゆりに、「ゲンタ君達、まるで低学年じゃないの。後々のことを考えて行動するということができてない。周りをきちんと見るとか、思いやるとか、できてない。ほんと、子供みたい」と言った。

「言えてる」さゆりは答えた。

「こども園の時から見てるんじゃけど、ずっとあんな感じ。全く成長しとらん」

それまでゲンタが口をきく度に泣きそうになるくらいピリピリしていたのが、さゆりの言葉を聞いて、スッと楽になった。

リュウトははるなの持ち物を取り上げようとするようになった。両親が子供の位置情報の確認のために持たせてくれたスマホを、「シールなんか貼って、ケースにもキラキラいっぱい付けて」とクラスの皆に見えるように振り回した。

「皆が同じようなものを持っているから、見分けるためよ」と答えたにもかかわらず、「学校へこんな派手なものを持ってきてもええんか」「見てみぃ、見てみぃ」と言いながら、ホームルームの時にクラス中に回覧する。

一年生の時から使っている物差しの名前が平仮名で書かれているのを、「自分の名前も漢字で書けないのか、平仮名書きです」と大声で言う。

さゆりが、「リュウト君は農家がいやで、都会への憧れがちょっと強いんじゃわ。ほなけん都会から来た人への関心の裏返し。男の子って複雑なんじゃ」と言って、慰めた。

※本記事は、2021年10月刊行の書籍『朱の洞窟』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。