【前回の記事を読む】娘さえも気づかない…毒親を毒親たらしめる衝撃の特徴とは

毒親と戦う人

ここまでは毒親そのものがどのようなものか見てきたが、ここからはその毒親に育てられ、虐げられ、それでも毒親に立ち向かっていった人たちの物語を紹介しよう。毒親との戦いは自分との戦いでもある。そこに気づくに至るまでには時間がかかるかもしれない。はじめは彼女らが、毒親から物理的に距離を取るに至るまでの話である。

儚い笑顔

母との葛藤を乗り越えて、ひとまず就職にまで至った女性

その女性は、ある大学の先生の紹介で来談した。その先生からは、時々学生や卒業生の相談を依頼されていた。その女性もその先生のゼミの学生だった。

最初の印象は、儚い、というものだった。パッチリとした二重の目で微笑んでいるが、控えめで、どこか緊張しているような、あるいは沈んでいるような表情に見えた。緊張より、焦燥感かもしれない。思い詰めやすい、自信のない表情だ。

白いシンプルなブラウスに紺のスカート。服装は、落ち着いている、あるいは地味といってもいい。それでもどこかしら、人をひきつける人懐っこさを感じた。

来談時の主訴は「家に帰るのが怖い、母の夢を見てうなされる、付き合っている人について」である。

〈よくいらっしゃいました。家に帰るのが怖いとありますが、どんなことか少し教えていただけますか〉

「……母とうまくいっていなくて……」

ぽつり、ぽつりと語られる内容は、まさに苦しみの道のりと言えるものだった。