娘たちを縛りつける毒親

一方、娘たちは呪縛に囚われている。お父さんに悪い、お母さんを助けなきゃ。これは犠牲者の多くに共通している。この呪文のせいで、娘は罪悪感と無力感の檻の中に閉じ込められている。確かに世間には、老後の世話をさせようと、娘にいろいろ与えて自分の手元に置こうとする親は珍しくない。

だが、そういった普通の親たちとは異なり、これらの毒親たちは、娘を一個の人間として扱っているように見えることもあるが、実はペットのような、あるいは奴婢に対するような扱い方をして、娘が思い通りにならないとさまざまに娘を傷つけ、意志や自由を奪う。このように、娘たちを言葉や暴力で縛りつけて、自分の道具のようにして育てているのも毒親の大きな特徴だと言えるだろう。

なかなかに恐ろしい毒親たちだが、自分はそういうことはまったくしていない、と世の母親たちは断言できるだろうか。

毒親はなぜ毒親か

このように毒親たちは、最初から娘に憎しみを募らせていることもあれば、自分の復讐の道具として娘を使う場合もある。可愛がりすぎて娘の人生を狂わせるかと思えば、自分の人生のシナリオに沿った生き方を娘に強いる者もいる。

ところが不調に陥った娘を相談に連れてくるのも、この毒親たちなのだ。それくらいなら、初めから愛情をもって育てていればよいのではないだろうか。しかし、それができるくらいなら、さっさとそうしていたであろう。

毒親には毒親の事情がある。自分の娘だからこそ他者に似ていることがたまらなく憎らしく、自分の娘だからこそ自分の復讐に利用してはばからず、自分の娘だからこそ自分と同じ生き方をするのが当然だと思うのだ。

こういった毒親たちの考え方、娘への仕打ちの理由は、毒親独特のものであるように聞こえる。だが、はたしてそうだろうか。この毒親たちは娘が疎ましかったのではない、自分の人生が疎ましかったのだ。そしてそう思わせた何かが、毒親たちの人生にあったのだ。

毒親たちが毒親になる理由は、毒親自身の中の人生にあるに違いない。毒親の背景にある家族や社会というものが、毒親を毒親に仕向けてしまったのではないか。そんな気がしてならない。

※本記事は、2021年10月刊行の書籍『毒親の彼方に』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。