また、秒針が動いている間にそれを見た場合は、あまり遅れが感じられないように思われるのですが、この際には運動視といって動きをとらえる機能が働くと考えられますが、おそらく運動視のほうが、静止画像としてとらえるよりも、見え方がやや速いのではないかと考えています。

視覚誘発電位の測定から、運動視刺激で後頭側頭部V5/MT野付近(後頭葉と側頭葉の間あたり)に150~200ミリ秒で電位が生じ、さらに複雑な動き(放射状opticflow)では頭頂葉に240ミリ秒で電位が生じるとのことです。

V5/MT野は、ランダムなドット(複数の点)の動きの中から、コヒーレント運動をする(同じ方向に動く)ドットを検出する能力をもつとの(4)ことですが、このV5/MT野が機能するには、それよりも前(150~200ミリ秒よりも前)に、もっと低次の視覚野のレベル(V1付近)でドットの動きが検出されている必要があるのではないかと思われるので、その意味で運動視は見え方が速いのではないかと考えているのです。

まず低次のレベルで動きが知覚され、さらに高次のレベルで統合されていくと思われるからです。このことから、秒針が動いているときに見ると、遅れは感じられないということになるのではとも思っています。

この節では、視覚感覚について、周辺視野での見え方が速いことと、中心視野での情報処理にかかる時間が感じられない理由として、記憶情報との照合の前の早い段階から見えていて、記憶情報との照合がされたあとの映像と統合され、一つに見えているからではないかと思われることをお話ししました。

ただ視線を向けた瞬間に(中心視野での)視覚映像が全く不連続とはならない理由については不明です。また、危険を感じた際には、情報処理過程の途中のかなり早い段階(完成される前の段階)での、記憶情報との照合の前の映像を知覚でき、それによってすばやい対応、行動がとれるということなのではないかと考えられました。

また、記憶情報との照合前の映像が認識できる場合というのは(道路での飛び出しの場合などを含め)、ボトムアップ的な認識の際ではないかと思われました。

※本記事は、2021年8月刊行の書籍『「意識」と「認識」の過程』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。