【前回の記事を読む】エクアドルへのバス旅!検問くぐり抜ける密輸者の腕に思わず…

第一章 米・中米・南米の旅

泥棒列車と密輸列車ボリビア(オルロ)→アルゼンチン(ブエノスアイレス) 一九七三年二月一六~一七日

泥棒列車―ボリビア国内の国境までオルロ→ビリャソン

コロンビアからペルーに入国するときの国境で、中米のコスタリカのサンホセのホテルで会った拓大のM君(彼はサンホセでは日本人のN君と一緒だったが、N君と別れてこんどは米国人のTと一緒に旅している)に再会する。彼らとはペルーの首都リマまで同行する。その後、米国の実家からの送金を待つTをリマに残してペルーのクスコ、チチカカ湖を経てボリビアのオルロまでM君を加えた日本人三人の旅となった。

アルゼンチンとの国境の町ビリャソンまでの鉄道チケットを買いに、朝七時半頃オルロ駅に行く。すると既に三十人位の人が切符を買うのに並んでいる。

寒い中を一時間ほど待たされて八時半頃にようやく切符が売り出される。しかし、並んでいる列に横から割り込む人が続出して、まじめに並んでいる人が騒ぎだし、警官が三人やってきてようやく落ち着く。それでも強引に割り込んでくるおばさんもいる。

地域や国を問わず、おばさんのエネルギーはすごい。ところが、十人くらいに売ったかと思ったら切符は売り切れだと販売窓口を閉めてしまった。それまでじっと並んでいた人々は怒り出した。こんなことだから寒い中を長時間も並び、また列への割り込みもあるのだろう。

われわれも当然腹が立ったので駅長室に文句を言いに行く。すると、切符販売所の裏口から入れてくれて、切符を売ってくれた。外国人だからだろうか。寒い中を長時間並んでも買えなかった現地の人に対しては多少後ろめたさを覚えたが、これでアルゼンチンに出発できるとほっとした。

オルロを十八時三十分発予定の列車は二時間遅れの二十時三十分に着く。さらに出発したのはその二時間後の二十二時三十分。結局予定から四時間遅れの出発となった。ホームに入ってきたラパスからの列車の中に、リマで別れたアメリカ人のTを発見。みんなで再会を喜ぶ。Tとは翌朝ゆっくり話すこととして列車に乗り込む。

その列車は長距離列車なのに、座席は日本の通勤電車のように両側に長いベンチシート。そして車両幅がとても狭いので両側のシートに人が座ると、座った人の足で通路を歩くのも困難な位である。その上、その通路には乗客がたくさんの荷物を置き、さらにはシートに座れない人が床に座っているので足の踏み場もない。

車内には十ワット位の薄暗い裸電球が一個ボンヤリ灯っているだけ。その混雑して薄暗い通路になんとかリュックを置く空間を見つけ、そのリュックの上に腰掛けることができた。標高三千~四千メートルくらいのアンデス高原の夜は冷え込んできて、セーター、ポンチョを着込んでも寒い。