搭乗時間三十分前には待合室へ

これは私がインドネシア・スマトラ島のプロジェクトに再赴任する際に経験したことです。

そのとき、私は同僚と二人で日本からシンガポール経由で、インドネシアの再赴任先へ出発する予定でした。その前日に私は会社の上司より、「親戚の高校生の男の子が友人と二人でプロジェクトの見学に行きたいと言うので面倒を見てほしい。二人はシンガポールからわれわれと同じ便でインドネシアに向かうことになっている。彼らにとって初めての海外旅行なので、申し訳ないがシンガポールの空港で彼らと合流して現地まで連れて行ってもらいたい」と依頼されました。

そのときの私の赴任地はスマトラ島の空港から車で約七時間かかる片田舎にあったため、彼らが移動するにはわれわれの車に同乗させる必要があり、そのためにはまず初対面の彼らを確認する必要がありました。そしてわれわれは早急に彼らを見つけるべく、自分たちのチェック・イン後にカウンター近辺でそれらしい二人づれを探しましたが見つからず、彼らがチェック・インしたのかどうかも確認できなかったため、やむを得ず搭乗便の待合室で待つことにしました。

時間はどんどん過ぎ、予定フライトの出発時刻が近づいてきましたが、まだ待ち人来たらずです。三十分前にとうとうゲートが開いて待合室で待機していた乗客がぞろぞろと搭乗口へ移動し始めました。搭乗する乗客の列が半分になった時点でも二人の待ち人は姿を見せません。

われわれは大いに焦ってきて、待合室入り口の担当官に二人がまだ来ていないことを確認し、二人を探しに行くことの了解を得て、航空会社の総合カウンターへ急行し、呼び出しを掛けてもらいました。その後、われわれが待合室へ戻ったときにはすでに一般乗客は全員搭乗を終えていました。われわれは乗務員に事情を説明し、出発時刻ギリギリまで待ってもらって、それでももう時間切れ寸前となったとき、ひょっこり二人が何事もなかった様子で現れました。

とにかく大急ぎでなんとか四人とも機中の人となれました。

教訓

勤務地に向かう車中で彼らに、なぜあのようなギリギリの時刻まで待合室に来なかったのか聞いたところ、彼らは「出発時刻の五分くらい前に搭乗口に行けば問題ないと思っていた」と言います。

私は彼らに国際線を利用する場合には、出発時刻の二時間前にはチェック・インし、搭乗便の待合室へは三十分以上前に入っていること(スタンバイ)が重要であること。理由としては、ダブル・ブッキングなどが発生した場合、先にチェック・インした乗客が優先されることが多いこと。

乗客が全員搭乗後には出発前に人数の確認(九・一一以降はどのフライトも、より厳重に確認されているようです)や機内持ち込み荷物やシートベルトの確認などがあり、搭乗時刻に遅れることは乗務員や他の乗客に大変迷惑をかけることになること。

また、たまにではあるが予定時刻前に出発するケースもある。航空会社によってはチェック・インが済んでいる乗客を待たずに出発してしまう場合もある。そしてわれわれが二人を探して大変だったことを伝えました。

二人は神妙に話を聞いてくれ、その後われわれのプロジェクトを熱心に見学し、喜んで帰っていきました。

※本記事は、2021年10月刊行の書籍『アテンション・プリーズ』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。