3章 仕掛けとその効果

先に述べたように、仕掛けが作動する時に大きな音がするようではたとえ運よく1匹捕獲できたとしても、その後同じ場所でその仕掛けを使うことができない。だから仕掛けの構造を考える上で最も優先すべき課題は、仕掛けが作動する時に音がしないことであった。

いつどのようにして捕まったのか、捕まったネズミが不思議に思うような、音のしない仕掛けを作ろうと思った。そうしてこれまでにいくつもの音のしない仕掛けを考案して作り、テストの目的で実際に使ってきた訳だが、それらの仕掛けのうち、これから仕掛け作りを始めようとする人たち、あるいは、生き物を研究する人たちにとって特に興味深いと思われる仕掛けを選んで、面白い観察結果と絡めて詳しく説明する。

1 ネズミに靴を履かせる作戦

これは、現場でネズミと格闘中に思いついたアイデアである。もちろん沢山のネズミを何とかしたいと思って考えている最中に閃いた。クマネズミの足には人間の手にある指紋のようなヒダヒダがあり、何かをつかんで登る時に有効である。

暗視カメラにはその様子が写っていて、ステンレス製の調理台の足を登る際に、ステンレスの板をつかんで一旦停止し、周りの様子をうかがっていた。一気に駆け上ると思っていたので、これも驚きであった。

この仕掛けは、そのヒダヒダのついた便利な足に靴を履かせて登れなくしたら面白いだろうという思いつきだけで作ってみた。金属の靴を履かせることができたら、天井に穴をあけて餌場に降りてきた場合、巣に戻れなくなったネズミのカチャカチャというタップダンスのような足音が厨房に響き渡るかもしれず、想像するだけで面白いことこの上ない。

しかし、そのネズミをどう処理するのかということが問題になる。ネズミは前足を使って餌を確認しながら食事をするそうなので、食事がうまくとれないことと巣に戻れないストレスで死ぬのではないかと想像しつつ、とりあえず作ってみた。

※本記事は、2021年11月刊行の書籍『文庫改訂版 捕獲具開発と驚くべきネズミの習性』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。