昔の話だと思われるかもしれないが、今でもビル街にはクマネズミが多く生息している。職業柄ネズミの匂いには敏感で、数年前に一度名古屋の食堂で、店に入るなりネズミの匂いが充満していることに気がついた。閉口したが他の客は気が付いていない様子で、楽しそうに食事に夢中になっている。私はさっさと店を出たかったのだがそうもいかず、落ち着かない気分で周りを気にしながら、揚げ物は大丈夫だろうと名古屋名物のエビフライ定食を食べたことを今でも鮮明に覚えている。

人々が気付かないだけで、今もクマネズミは健在だ。最初の駆除作業から1週間後、再度粘着シートを設置すると今度は15匹程度捕獲できた。3週目にはそれほど捕獲できず、まだ残っていると思われたが、設置と回収の労力に見合う結果が期待できないと考えてそこで捕獲作業を中止した。

案の定数カ月後には元の数に戻ってしまったため、すべてを捕獲できなかったことになり、結果として駆除に失敗したことになる。ネズミの数を減らすだけで完全に駆除することができないのであれば、お客様のニーズに応えることはできない。クレームだけが残るケースが多くなった。

不衛生極まりない現状を最も良く知っている立場にいるのだが、画期的な駆除方法も現れないため、都市部におけるクマネズミの駆除は進んで引き受けたくない仕事になったわけである。

※本記事は、2021年11月刊行の書籍『文庫改訂版 捕獲具開発と驚くべきネズミの習性』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。