第2章 そのマスク、何ですか?

教えて! 大西先生 Q&A

私は以前、BSS(山陰放送)ラジオの「教えて! 大西先生・環境医学ニュースの読み方」というレギュラー番組で、科学ニュースの読み方を解説し、そして、正しく理解し判断するための知識を啓発しておりました。その番組では、パーソナリティとのやりとりで「コーナー」を展開し、マスクに関する質問についても答えていました。

ここでは、正しいマスクを選択するためのQ&Aをまとめています。

今の目的と場面に応じて、さまざまなマスクの中から適切な選択ができないと、その目的は達成されません。ただし、回答に記載されたマスクを着用すれば、確実に大丈夫というわけではありません。くどいようですが、正しいマスクの選択ができていても、正しい方法で着用できていなければ目的を達成できないということは、全回答に共通していえることです。

パーソナリティ:「インフルエンザにかかってしまったのですが……」

大西:「周りへの飛沫感染で、ウイルス・細菌などを含む飛沫を撒き散らさないようにするためにも、エチケット目的の衛生マスク、または、防じんマスクを着用してください。ただし、衛生マスクでは飛沫を防ぐ能力が完璧ではないため、特に防じんマスクの使用をお勧めします。また、子どもの場合は、子ども用のカップ型エチケットマスクがあります」

パーソナリティ:「風邪・インフルエンザにかかっている場合、入社面接を受けるときに衛生マスクをつけるのは失礼でしょうか?」

大西:「面接官に飛沫感染を引き起こす可能性があります。あらかじめマスクを着用することを断ってから、衛生マスクを着用するようにしましょう。感染の拡大を防ぐためにも、集団の場では必需品です」

パーソナリティ:「タバコの煙が気になるのですが……」

大西:「タバコに含まれるニコチンなどの粒子の吸引を防ぐためには、防じんマスクを正しく着用してください」

パーソナリティ:「飛行機に乗ったときのエンジンの臭いが気になるのですが……」

大西:「気体を完全に防ぐ場合は、防毒マスクを着用しなければなりません。エンジンの付近で作業する人であれば、なおさら防毒マスク一択しかないのですが、離陸後に機内の換気でエンジンの臭いは解消されるので、乗客が防毒マスクを着用するのは現実的ではないでしょう。

一時的な臭いを防ぐということであれば、活性炭入りの防じんマスクが適切です。衛生マスクでは隙間ができて防げない可能性が高いのでお勧めはできませんが、カプセルを潰して匂いが出るタイプの衛生マスクの着用などは、気を紛らわすにはよいかもしれませんね」

パーソナリティ:「アスベスト・石綿はどのようにして防ぐのですか?」

大西:「防じんマスクの中のアスベスト除去作業用マスクを使用してください。作業レベルに応じて使用する保護具が定められています(「石綿障害予防規則〈石綿則〉」厚労省令第9号)。暑さや息苦しさが気になる場合は、電動ファン付き呼吸用保護具や呼吸追随形電動ファン付き呼吸用保護具の使用がよいでしょう。着用方法もさることながら、ゴーグルもしくは全面形マスク、防護服の着用も必要です」

【パーソナリティ: 大田祐樹・岡村帆奈美・中岡みずえ】

※ 脚注1:オペ看(オペ室ナース)…… オペ室(手術室)勤務の看護師のこと。手術に必要な器械や器具を準備し、医師に手渡す「器械出し看護師(直接介助)」と、患者の麻酔の介助や観察、記録など、多岐にわたって手術を幅広くサポートする「外回り看護師(間接介助)」に分類される。

※ 脚注2:サージカル・スモーク(surgical smoke)…… レーザーもしくは電気外科器具を用いた外科手術のときに、組織を熱破壊することによって発生する煙のこと。外科医、看護師、外科テクニシャンを含む医療従事者への変異原性や感染などの健康被害の可能性が報告されている。

※本記事は、2019年11月刊行の書籍『マスクの品格』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。