節目毎に開発を大きく前進させる結果が出たこともあって、本業の忙しさを紛らわせることができる程度に、夢中になって空き時間を使い思索にふけった。捕獲できなかった場合でも、捕獲具中の金属板に残った足跡からどのような動きをしていたかを知ることができる。失敗は多く手掛かりは少ない。「恐るべしクマネズミ」と何度つぶやいたか分からない。だが、着実に進んでいた。

いまだに、クマネズミに対する理想的な捕獲具を完成したとは言えない状況だが、奮闘努力の数々を振り返ってみて、後続する一部の捕獲具マニアのためにも、私が十年間で知り得たことを公表する時期がきていると思っている。

人類にとってネズミが再び脅威となる日が来るかもしれないので、その時に役立つよう基礎研究をやっていると常々自分に言い聞かせていることもあり、知り得たことを無駄にはしたくないという思いも強い。また、仕掛けに対するネズミの行動観察と言う側面では、その習性に関する面白い観察事例がいくつかあるので、ネズミの生態に興味を持つ一部の研究者の参考になればいいと思っている。

導入部分としては実にマニアックな切り口ではあるが、読み進めてもらって発想を広げていただけると、童話作家が喜んで題材にしたくなるような観察例がいくつも含まれている。それは、おそらく過去に誰も目にしたことがないネズミの様子であって、ネズミに対する認識を一変させるような面白い観察である。

実際、その観察の後私の想像は一気に膨らみ、メルヘンの世界に突入したのではないかと思うほどだった。ちょうど、アリスがワンダーランドに足を踏み入れた時にネズミさんたちが話し合っているのを聞いた時のように私は感じた。

一人で楽しむのはもったいないし、埋もれさすには惜しいという思いが強いので書き残すことにした。観察したことは事実なのだが、思い込みで書いた部分も多くあるため、読み物として、ファンタジー大好き、生き物大好きの人にお勧めだと思っている。

※本記事は、2021年11月刊行の書籍『文庫改訂版 捕獲具開発と驚くべきネズミの習性』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。