台湾家族旅行の最終日前日、いざ決行。台北バスターミナルから、8時丁度発の国光号バスに、なんとか飛び乗る。中国語は、不勉強で全くわからないが、そこは、漢字の国、バスの行き先を示す前面の表示は、間違いなく「埔里」を表示している。飛行機のビジネスクラスのように独立した3列シートの最前列に、空席が一つ、まずはゆったりと腰をおろす。

バスは出発したが、台北市内の自動車道路は、例によって朝の渋滞中でなかなか進まない。しばらくしたころ、携帯電話が鳴り出した。家内から、南投県の埔里の日帰り往復は無理で、下手すると明日の帰国便に間に合わないと現地ツアーのガイドに脅かされたらしい。

「こちらは、バスの所要時間と現地発の最終便の時刻までちゃんと調べてあるから、心配ないよ。夕方の6時か7時ころまでには、台北に戻れる予定だから」

そう言って電話を切る。

[写真3]バスは出発、台北市内の渋滞をようやく抜けて、高速道路で台中経由、埔里をめざす。
[写真4]台中市内

「途中で帰ってこい」と言われぬよう強気に出たものの、台北市内の渋滞が、ひびいてか、バスの運行は遅れ気味。道中興味深くのどかな南国の風景を、車窓から眺めつつ過ごしていたが、台中に到着した時には、発車から既に3時間近くを経過している。ここから、南投県にある埔里までは、まだ1時間はかかりそうだ。少し詳細なタイムスケジュールと行動計画をせねば。

現地での行動を、できる限り効率よく行いたい。埔里のバスターミナルに着いたら、帰りのバスの時間を確認し、直ちに切符を買おう。そして、日本語か英語ができるタクシー運転手を探して、博物館まで直行してもらおう。いや帰りまで待ってもらい、同じタクシーで埔里のバスターミナルに戻ればいい。そうだその場合、日本円でせいぜい3千円くらいまでで時間チャーター契約の交渉をしよう。

バスは、3時間のはずが結局4時間半かかり、埔里に到着。

「備えあれば憂いなし」

あとは、道中の計画通りことが運び、気が利くタクシーの運転手にも巡り合い、10分ほどで、目的の場所に着いた。

(*注1)“All About Tea – W.H.Ukers 1935”

(*注2)『三井事業史』 財団法人三井文庫

※本記事は、2021年10月刊行の書籍『紅茶列車で行こう!』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。