網膜から視覚皮質への伝達

ところで網膜は画像データを数十ミリ秒単位でパルスに変換しているとのことで、それが視覚皮質に向けて送られているということと思います。視覚の時間分解能が約30ミリ秒ということを考えますと、少なくともそれと同じくらいの間隔では情報が送られ、視覚野で処理され、それらが統合されていくことで、連続的な映像として外界がとらえられているということになるのではと思っています。

次に、クロノスタシスという現象について私の考えをお話しいたします。これは時計の秒針を見たとき、本来秒針が止まっているはずの時間よりも長く止まって見える現象です(秒針をサッケードでとらえる場合もあると思います)。

この現象の理解としてわかりやすい考え方は、たまたま秒針が動き出す瞬間のすぐ直前に秒針を見ると、そのとき秒針は止まっているわけですが、その止まっている秒針の視覚情報は網膜から視覚野に到達し、約170(~200)ミリ秒程度で記憶情報との照合がなされ見える(実際には100~145ミリ秒程度で見えている)わけですが、それが静止画像として見える前に(視覚化される前に)すでに秒針は動いています。

つまり、秒針が動いた瞬間には、直前の止まっていたときの映像が脳内で情報処理される途中の段階なので、その時点ではまだ動きは見えていないと考えられるわけです。ですので、本来秒針が動いているはずの時点で、止まって見えるということになるわけです。

※本記事は、2021年8月刊行の書籍『「意識」と「認識」の過程』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。