【前回の記事を読む】スウェーデンの世界遺産…国王が住むドロットニングホルム宮殿

スウェーデン問題

ノルウェー入り、グリーグの家

次の朝、ストックホルム空港発の便でスカンディナビア山脈を越え、ノルウェーに入った。山稜とフョールドらしき水面が雲間にチラチラするうちにベルゲン空港に着いた。珍しく曇っているが、ベルゲン名物の雨が降ってないのはありがたい。

すぐに山と海に囲まれたカラフルな漁業の街に入った。多彩な木造の三角屋根が面白い。世界遺産のブリッゲン地区やハンザ博物館を見てからバスは山手を十五分、トロルハウゲン村でフョールドを遠望して歩くこと十五分でノルウェーの大作曲家グリーグの家に着いた。

エドワード・グリーグ(一八四三~一九〇七)は普通、国民楽派といわれ民謡など郷土色強い音楽を作った。そういえば彼はロシアやボヘミアの作曲家のように音楽の都ウィーンへ足を踏み入れていない。清冽なピアノ協奏曲、学校の音楽の時間で誰でも聴いている「ペールギュント」、特に「ソルベーグの歌」はクラシックの中で最も美しいメロディーの一つだろう。私の好みをいうと、青春を懐かしむ「二つの悲しい旋律」の第二曲「過ぎにし春」を聴くと涙がにじむ。

グリーグの家に彼は二十二年間住んでいた。自筆の楽譜をはじめ充実した展示がされている。六月頃、世界各国の名演奏家が集まってベルゲン音楽会が開かれ、そのためのコンサートホールもある。

ノルウェー賛歌

清爽、急峻なフョールドの威厳

ベルゲンに戻り、埠頭の魚市場へ行く。魚はさすがに豊富で、大西洋の海の幸が勢ぞろいしている。北海は暖流のメキシコ湾流が上がってくるので、ここも緯度はカムチャツカの北なのに気候は温暖だが雨が多く湿った雰囲気がある。日本と違うところはマグロやカツオがなくて、サーモンやカニのような北方系が多い。イチゴが芯まで赤く30NOK(1NOKは二〇円)を食べつくした。世界遺産ブリッゲン地区で旧い住居を見た。ハンザ同盟の名残である。この夜は郊外のグリーグホテルへ泊まった。ここもコネクティングルームに当たった。私が風邪上がりなので旅行会社が気をつかっているのかな。

翌日はフョールド観光である。まずはグドバンゲンまで一五〇キロのバスの旅である。ほとんどヴォスまではオスロ行き幹線鉄道に沿った登り坂であり、森と岩に覆われた山道である。