住宅政策は日本も見習いたい

日本では経済格差が大きくなっているというのに、スウェーデンは世界の文明国の中で最も格差が小さく平等であるよう政府が懸命につとめている。しかし問題が発生する。

七〇年代のスウェーデン流が将来心配なことを岡崎紀芙氏(早大)が列挙している。①国際市場での競争力が低下する②官僚機構が肥大し息が詰まるようになる(税務署の皆様御免なさい)③過剰福祉が勤労意欲を低下させる④高負担政策のゆえに企業の国外脱出を加速させる⑤平等主義の徹底はサービスの画一化を招く⑥国民総背番号制度などが導入され管理社会化する⑦重税政策のための脱税(地下経済)を繁殖させる⑧青年層はじめ倦怠感が拡散しヤル気を失った青年は麻薬やアルコール依存に走り自殺も増えている。

モラル的に問題なのは最後の⑧で、ニュースによれば男女関係は乱脈で、離婚よりもフリーセックス化し、映画の名匠ベルイマンが描いた通りであるという。彼は北国の高齢者家族の孤独と愛の欠乏、不毛を性を素材に厳しくえぐった芸術家である。妻も隣人の妻も区別がつかないようだと、すでに聖書に背いている。同じ北国ソ連のように平等ー腐敗ー崩壊の道をたどるのだろうか。

しかしながらこの国で優れた政策の一つは住宅である。百年前のスウェーデン農家は世界でも貧しい方に属しみすぼらしかった。戦時中の社民党ハンソン内閣のとき、「国民の家」構想が打ち上げられ、今では一連の多くの建物がまとまって「農家コンプレックス」という大農家を造っている。子供は十五歳くらいで別棟に独立して住む。都市部でも広い公営住宅が多い。日本の住宅も広くなりつつあるが、まだ値が高いわりに長持ちしないなど地震と関連する。日本の建設行政はすべきことが山ほどある。

さてストックホルムの観光バスは旧市街ガムラスタンの大広場で停まった。中世がそのまま息づいている地区で、何となくホッとする。物価が高いのであまり買い物しないが、土産用のビスケット(40クローネ〔SEK〕、1SEK=一八円)だけ手にいれた。昼食は王立劇場の三階で名物ミートボールで結構美味かった。

午後は西郊外の国王居住の世界遺産ドロットニングホルム宮殿を拝観した。純バロック形式でベルサイユを思わせる庭園を広くとったのびのびした宮殿であった。日本人女性ガイドが王室の歴史の絵画を説明したあと、「この国の跡継ぎは女王であり、女系長子制は完全に認められています」と日本を意識してやや語気を強めた。女性の衆議院議員がほとんどいない日本で、彼女の願望がいつ達成されることか、私の年齢では想像がつかない。

北郊外のSホテルに着くと宿泊スペースの広さに驚いた。寝室と居間、水回り(床暖房つき)から成るいわゆるコネクティングルーム形式である。ここにもスウェーデンの住宅政策の基本をみることができた。

※本記事は、2021年7月刊行の書籍『21世紀の驚くべき海外旅行II』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。