修学旅行と私(2) ~2度目の旅行担当、自らの企画に酔いしれる~

2度目に担当した修学旅行は、敢えて「飛騨、北陸」方面を設定した。その理由は、京都や広島、長崎といった修学旅行の定番〈注:近年の修学旅行先は、沖縄や北海道が主流となっている〉ではなく、この頃の東京からの修学旅行としては、いわば前人未到の渋いコース?をプランニングしてみたかったからだ。

主要行程は、1.NHKの年の瀬番組『ゆく年くる年』で、必ずと言っていいほど登場していたあの永平寺を入れ、そこで生徒に座禅を体験させたい(実際は「講話」に化けてしまったが……)、2.全員で日本海の夕日(千里(ちり)(はま)なぎさドライブウェイ※2)を眺めさせたい、3.能登半島八ケ所巡り(宿泊地の和倉温泉を“ベースキャンプ“として生徒が日帰りで行って帰ってこられる8コース)をやらせたい、そして、4.古都金沢の魅力を存分に味わわせたい、といった“てんこ盛り”の欲張りツアーであった。

この学校は、先にも触れた通り、当時、都内でも有数のマンモス校で、1学年10学級、500名近い生徒が在籍し、全校生徒ともなれば、1500名に迫らんとする大集団であった。そんな訳で、これまでの修学旅行はというと、学年を2分割し、5クラスごとに行動形態や宿舎や日程を分散させたり、ずらしたりするような態勢を組むことが多かった。

私はこれまでの慣例を破り、10学級全員が一つになれるような場面をつくれないかと考えていた。その象徴的な企画として、「千里浜なぎさドライブウェイ」をバス10台で連ねて波打ち際を走ること、そして最大の見せ場は、学年全員で日本海の夕日を眺めることをプランニングした。

※2:「千里浜なぎさドライブウェイ」石川県羽咋郡宝達志水町今浜から同県羽咋市千里浜町に至る砂浜の延長約8㎞の観光道路で、海水浴場も兼ねている。日本で唯一、一般の自動車やバスでも海岸線の砂浜の波打ち際を走ることができる道路として有名である。(出典:『宝達志水町公式ホームページ』より「千里浜なぎさドライブウェイ」一部参照)