第二章【反発】

明らかに地震だとわかる揺れがやってきた。屋外にいても瞬時にわかるほどなので強い地震に違いない、心の侵入者が待っていたくらいだ、直後にさらに大きな揺れがやってくるはず。

電話の向こうの様子が気になってしまい、大声で話しかけてみたが、父も電話の向こうで何かを叫んでいる。もう収拾がつかない。パニックとはこういう状況をいうのかもしれない、当然ながら内容は全くといっていいほど聞き取れなかった。

さりとて電話ばかりに構ってもいられない、ここは断崖に近く大きな揺れがやってきてからでは手遅れになりかねない、咄嗟の判断で急ぎ引き返そうとしたが、間髪をいれずに予想通りの立っていられないぐらいの揺れが襲ってきたのだ。

投げ出されるように草むらに倒れこんでしまった。ここには草以外に掴まる物もなく、ストックを放ってやむなく這うように祠の近くまで戻ると、なんとその祠がメリメリと音を立てて踊るように揺れているのだ。本当に踊っているのではないか、そう見間違えるほどリズミカルに揺れている。

それを目の前にして、まるで草むらに潜む小動物のように、その場に這いつくばって揺れが収まるのを待った。まさに小動物であるレオは当然草に隠れて姿が見えなくなっていた。

「レオ君どこにいるの大丈夫?」

心配になって呼んでみるとすぐ横で鳴き声が聞こえる、大丈夫のようだ。やがて揺れが小さくなり、そして収まるかのように見え安心しかけたその時、追い打ちをかけるように再び強さを増して揺れが襲ってきたのだ。必死の思いで草を掴んでいた手にさらに力が入り、草の根が切れる音がした。それにしても一向に揺れが収まる気配は感じられない。