自分の経験から考える視覚と時間

以上のような自分の経験も含めて、視線を対象に向けてから、周辺視野では30~40ミリ秒程度で見え、中心視野については、V1で明らかな電位が生じる75~100ミリ秒後以降で見え(はじめ)ると考えられ、映像として(だいたい)完成するのに145~170ミリ秒程度、記憶情報との照合がなされて知覚としても完成するのに170~200ミリ秒程度かかるのではないかと考えられると思っています。

また、はじめの30~40ミリ秒から60~75(または80)ミリ秒程度の間では、周辺視野では見えていて、中心視野では見えていないという状態となっていると考えるのが妥当のように思います。ただ日常生活で、中心視野での見え方にそれほど時間がかかってはいないように思えますし、ふだん、見えていない時間が一瞬でもあるようには、どうしても思えません(周辺視野での見え方は速く遅れません。中心視野での見え方が遅れたり、一瞬見えなかったりということは自覚されず、全視野が最初からリアルタイムに見えている〔ように感じる?〕のです。もしも80ミリ秒間程度でも見えなければ、一瞬見え方は不連続となるはずです。なぜこのように、理屈と実際の見え方とがちがっているのかということを、もう一度考えてみようと思います。

※本記事は、2021年8月刊行の書籍『「意識」と「認識」の過程』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。