教科指導、受験指導に尽力 ~ライバル教員と人気講座を競い合う~

当時は、現在のような「地理歴史科」、「公民科」という呼称はなく、この二つを合わせて「社会科」とよんでいた。当該校の社会科には、地理2名、日本史3名、世界史2名、政治経済1名、倫理1名の9名の教員がいた。

日本史受験者は例年多く、受験対策の講習は必須であった。そのため、日本史は他科目に比べ3名と多めの配置であったが、互いに連携・協力することは全くなかった。

それどころか、講習会などでもライバル心をむき出しにし、それぞれが独自に開講していた。自ずと生徒の人気度が、講習参加希望者数で白日の下に晒される。

ある担当は40名程収容の普通教室に収まる程度、またある担当は教室には収まりきらないので、大会議室に100名近い生徒を対象に、マイク片手に講義するなんてこともあった。こうしたことも、いい意味で“競争心”を駆り立てる要因にもなっていた。

そんな中で、自らが教えた日本史受験者の中から、現役で早慶などの難関私大に合格し、「先生のお陰です」「先生の授業、最高でした」なんて感謝の言葉をもらうと、何とも言えぬ、まさに、これぞ「教師冥利に尽きる」というものだった。

※本記事は、2021年10月刊行の書籍『ザ・学校社会 元都立高校教師が語る学校現場の真実』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。