蚕ロボとタコロボによって船の外形が作られた後に、船の構造が変形しないようにと筋交いや間仕切り工事が行なわれるが、その主役がクモロボである。

通称クモロボ、正式表示はSPI─501号。

手足を広げると30メートルにもなる大型のロボット5基(匹)と、1メートルほどの配線専用の小型クモロボも10基(匹)が製造された。

口から炭素繊維の糸を吐き出し、クモが網を張るようにネットや仕切りの壁を作る。

居住スペースと前後にあるエンジンルームの仕切り壁、船内の筋交いによる補強や船の外壁の岩石を固定するためのネット張りにもこのロボが活躍する。

宇宙船内の間仕切りや船外のネット掛けなど、強力な8本の足でしがみつき、口から吐き出す強力な炭素繊維でクモの巣の壁などを構築して、船全体の強度を増す役割も果たす。

船の中に張り巡らされた電気や通信用の配管は小型のクモロボがホース状の穴の開いた糸を吐き出し、そのホースの中に電線を通す。これが配線を保護する役割を果たす仕組みである。

仕上げのときは、形状記憶合金を吐き出しながら機材の固定や船体のゆがみを調整する。

このクモロボにはもう一つ特殊任務もある。それは船外活動のときに長い糸を出して宇宙空間を自由に飛び回ることだ。まるでスパイダーマンのように船から500メートルを守備範囲とする。

船への接岸や物資の空中受け渡しなどで困難な状況に追い込まれると、このクモロボが助けに入る。

地上のクモのようにわずかな揺れにも反応し、大きな目で対象物の動きを検知する優れもので、しかもこのクモロボは行動が多様性にあふれるために乙姫から指示を受けることなく周りの状況から何をすべきか自立思考できるように作られている。まるでウラシマの介助犬のような高い能力が与えられているロボットである。

船本体が完成すると、今度は内装と外装に入るが、細部の調整やきれいな仕上げが船の完成度を上げる。このとき活躍するのがミツバチロボである。

※本記事は、2021年7月刊行の書籍『U リターン 【文庫改訂版】』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。