生き物から着想を得たロボット

通称タコロボ、正式表示はOC─301号、大型のロボットである。製作基数は10基。

このタコロボは、タンクローリーのような大きなタンクを持ち、蚕ロボが糸を張った隙間に金属粉入り強化FRP剤を吹き付け、隙間に土壁を張るように埋めていく、船体や居住ドーム、エンジンルームの基本構造を堅固に構築するロボットである。

この壁の厚さは、外壁は1メートルほどあり耐熱耐放射線板なども組み込まれる。内部のエンジンルームや居住ドームの壁厚は30センチほどであるが水や空気が漏れないように均等に精密な加工が求められる。

内面の吹き付けは放射能を防御するために金属の粉が大量に含まれている。

織田がドクター本多に、放射能が人体に与える影響について聞いた。

彼によると「広大な宇宙を旅する途中には、放射能などの人体に影響を及ぼす宇宙線が飛び交っていると思われる。それは、コンピューターや生命の居住区域に甚大な影響を及ぼす恐れがあるので対策を十分にしておかなくてはならない」とのこと。

そこで、タコロボは放射線やX線などの宇宙線の防御のために、鉛やタングステンなどの分量を調整して繭を固めていく。

このFRPは腐ることはないが、何千年もの間に劣化してボロボロになる恐れがある。

宇宙空間でどの程度の劣化が進むかは全くの未知数、劣化が進めば船の耐久性も失われ空気漏れや水漏れが起き宇宙に放出されてしまう。

タコロボは宇宙船が飛び続ける間中、補修をし続けなければならないことになる。

蚕ロボとタコロボが船体の構造を作り上げていく工程で、船の周りは相当のゴミが浮遊することになる。風のない宇宙では、ゴミは船に付きまとい作業を進めるのにとても厄介なものであるので、次々と回収しなくてはならない。

このゴミを回収するのがクラゲロボである。

通称、クラゲロボ正式表示はJe─201号。

製造現場の宇宙船の中と外に浮遊するゴミを回収したり、壁面に張り付いているゴミを手足で引っかいたり、吸い取ったりして、船内を清掃するロボットである。

まるで海の中を浮遊するクラゲのように、船内のわずかな気流に乗って何本も出ている触手でゴミを感知してはかき集める。

わずかな動力で休むことなくうごめく姿は、いつまで見ていても飽きない海の中のクラゲと同じである。

船外のゴミは長い触手を使い、手繰り寄せて回収する。

クラゲの大きさは、頭の部分が5メートルほど、触手の長さは20メートルほどあり12本の足みたいな触手がゴミをからめ取ったり剝ぎ取ったりするのである。

宇宙船建造の軌道上には廃棄された人工衛星や、ロケットの破片なども飛んでくる。これが衝突すれば、極めて高速なために危険な存在である。このようないわゆる宇宙ゴミもこのクラゲロボが回収する。

全部で10基(匹)作られ、蚕ロボットが出した糸くずの回収や壁からはみ出している糸を器用にこそげ取る。

タコロボが吹き付けるときに飛び散るゴミは、無重力の船内をとどまることなく浮遊するのでこのクラゲロボの長い触手が威力を発揮する。

集められたゴミは5メートルもある頭の中に貯められ小さく圧縮されて大気圏に放出されるが、このゴミが大気圏で燃えるときはきれいな虹色の光を放ち地上の写真マニアの間では、ちょっとした撮影ブームになっている。