最初のホームルームが終わり、保護者の皆さんに挨拶し、昇降口に駆け降りる。下足箱の利用ルールや駐輪場についてのあれこれを、まだ右も左も分からない新入生に案内するためだが、そこはベテランの副担任の先生方がうまく仕切ってくれていた。そして、北門の周辺には、ありとあらゆる部活の上級生が待ち構える。もちろん、ラグビー部の二年生たちも、新品のボールをそれぞれに抱いて、男子の誰彼に話しかける。驚いたのは、新入生の一人でもある滋田くんが、その先輩たちと一緒に勧誘していたことではある。

「トモっち、向こうの一年生グループに向かえっ!」

勧誘活動を仕切るのは、やっぱり佐伯くん。本人は身体を動かすことなく、もっぱら指示を出しまくっているだけだ。榎くんと澤田くんは、なぜだか新入生本人ではなく、一生懸命そのお母さんらしき人をかき口説いているし、寺島くんと前田くんの二人は、大きくラグビー部と書いた段ボールを持ってぬーぼーと立っているだけ。彼らの作戦は、今日のところはこの先輩はラグビー部なんだと思ってもらえればいい。それだけなのだそうだ。

そして明日からは昇降口に網を張って、とにかくグラウンドに連れて行くという、強引なだけで作戦じゃないじゃん、という作戦なのだった。ある意味、部員たちにとっては入学式の喧騒は、ちょっとした息抜きでもある。スパイクに履き替えてグラウンドに出れば、次の週末にひかえている大会のことで目一杯になる。

確認しなければならないことが山のようにあるし、まだスキルが高くないものだから、できないプレーもたくさんある。できることを、とにかくしっかりやるんだ。それだけなのだ。

※本記事は、2021年6月刊行の書籍『楕円球 この胸に抱いて  大磯東高校ラグビー部誌』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。